発想の転換

私が昔のクラブを使っていると、よく思わない人もいると聞く。

昨日の投稿「発想と手法」。あたらめて自分で読み返してみたが、やはりゴルフクラブの開発は、有史以来、常に同じ方向を向いて進められてきたと思う。ウイルソンのエンジニアが言ったように「もっとやさしく、もっと遠くへ」。それが変わることのないゴルファーニーズであるからだ。昔も今も。クラブを持ち替えることで、少しでもニーズ(夢)を満たそうと、各時代のエンジニアが知恵を振り絞ってゴルフクラブ、とくにドライバーを「進化」させてきたのだ。

今、私たちが手にしているゴルフ道具はその最先端である。クラブを持ち替えることで「もっとやさしく、もっと遠くへ」。実際にその夢は実現されている、と思う。いつからか「新しいクラブにしたって大差ない。何も新しくない」なんて声がゴルファーから聞こえるようになったが、それはゴルフメーカー開発力の「限界」なのではなく、道具でできることの限界に近づいたからなのではないかと個人的には考える。すでに「ええやつ」を使っていることの証し。

とくに1995年以降は「もっとやさしく、もっと遠くへ」を実現するための方法論として、“飛びの三要素の最適化”が確立されて、それを実現するための新しい手法(技術)が次々と生み出されてきた。そして、その効果を広く、わかりやすく宣伝すればするほど、その効果的な新技術はお上に目をつけられ、ルール改正という大鉈によって意味のないものにされてきたわけだが、その無慈悲なルールの下でも40年前と比べれば、ゴルフクラブは十分に「もっとやさしく、もっと遠くへ」を叶えるものになっていると思う。今、どのブランドの新製品を打ち比べても10ヤードも飛距離が変わることがないのは、“飛びの三要素の最適化”が高レベルで達成されているからである。どのブランドのドライバーでも、何十球か打った中で得られた最大飛距離は同じになるはずなのだ。「もっとやさしく、もっと遠くへ」を叶える技術は成熟し、平均化しているのだ。

フィッティングとは、その中から最大に飛ばせる道具を見つけるものではなく、より「安定的に」理想の弾道が生み出せる相棒を見つけ出すためのものである。簡易的に行われるDEMOは、一発の最大飛距離を見つけるものになりやすい。

ともあれ、どんな最新の陸上スパイクを履いても、誰もが9秒台で100メートルを走れるわけではない。ゴルフクラブも同じ。いかに有用な技術開発を行なっても、すべてのゴルファーのドライバー飛距離を300ヤードに伸ばせるわけではないのだ。最新のゴルフクラブを使って得られる飛距離は、今の自分の限界飛距離だと個人的には考えている。

発想の転換 その1

では、もう最新クラブを手にしている我々に「飛距離アップ」の可能性はないのだろうか?

それが大間違いだと思うのである。今、飛ばせていない人ほど、自分のスイングやフィジカルを改善することで平気で30ヤード、50ヤード飛距離を伸ばせる可能性があると思うのだ。

発想の転換は、我々ゴルファーこそしないといけないと思う。その始まりは、進化した道具を手にしているのに思ったように飛距離が伸ばせないのはなぜか、と考えることだと思う。

もしかして「俺は飛ばない人」なのではなく、「まだ飛ばせていない人」なのではないか。レッスンに通えばもっと飛ばせる人になれるんじゃないか。もっと飛ばせるようになった自分が最新クラブを使えば、今よりもどえらく飛ばせるのではないか、と。こう考えれば、今やるべきことはクラブの買い替えではなくレッスンに行くことに変わる。その後にまたクラブを買えばよい。

発想の転換 その2

私自身、今、パーシモンのフェアウェイウッドを愛用しているが、ここにも発想の転換がある。ソールプレートには「4」とか「5」と書いてあるが、コレを最新の「4」や「5」の飛距離と比較するのをやめた。最新の方が遠くに飛ぶに決まっているからだ。では、なぜ飛ばないパーシモンを使っているのか?

それは、200ヤード前後が安定的に打てるからである。「4」ならば230ヤード飛ばなければならない!とは思わない。このクラブで200ヤードしか飛ばせないなら、残り200ヤードで使えばいいだけなのだ。230ヤード飛ばせるクラブが必要ならば、他のモデルを入れればよいだけである。

発想の転換とは、「4」でもっと飛ぶものを探すのではなく、何番、何度となっていようが欲しい結果(弾道/キャリー)が得られればそれを最高!それはコレ!と思うことではないかと思う。200ヤード打とうと思ったのに、230ヤード飛んでしまったら困る!そういう風に思うことではないかと思う。

「もっとやさしく、思ったエリアに

我々が発想の転換をすることで、新しいゴルフクラブの可能性もまた広がっていくと思う。

もちろん、もっと遠くへ!の追求も継続して行うべきである。そのうえで違う目的の道具もあれば、初めてそれが「選択肢」となる。

 

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在