シャフトの真っ直ぐな中心線にクラウン上に示したヘッド重心を重ねます。当然、深重心ヘッドほどリーディングエッジが左を向きますが、この状態でスクエアグリップします。
最近、シャフト中心軸にヘッド重心を重ねてから握る。という試みをずっとしています。
もともと、シャフト軸とヘッドの重心がズレているゴルフクラブ(番手)ほど注意して扱わなくてはいけない!という観点から、ゴルフトゥデイというゴルフ雑誌の編集部に勤務していた10年以上前から再三記事にしてきた「視覚重心点」の話。その発展系になります。
大型ヘッドほど、注意が必要 と思います。大型ヘッド=深重心になりやすいから、です。
深重心とは、いわばヘッドの飛球線後方が重たいということです。おしりが重たいとインパクトでフェースが上に向くようになります。深重心が高打ち出しになりやすいのは、ロフトが大きくなるように当たるからです。
でも、これはやりすぎると振りにくさにつながります。インパクトで左手が浮き、身体と腕が離れてしまいます。また、フェースが右を向いたままインパクトしやすくなる傾向も強くなります。現在のドライバーはルール上最大の大きさ(深重心・長重心)、高慣性モーメント(重ヘッド)、長尺、しなやかフレックス(硬さ)、高トルクと、振りにくく、振り遅れやすい要素が揃っているともいえます。
だからこそ、重心角を大きくする・シャフトのしなり戻りを速くする・カウンターバランスにする などして、振りにくさと振り遅れを補おうとしているわけです。
ヘッドの本当の重心はヘッドの中に浮かんでいます。それをフェース面上に表したのが一般的な重心位置(フェース面上の重心点)。私が示しているのがクラウン上に表した「視覚重心点」になります。
クラウン上にヘッドの重心位置を示してみると、シャフト軸からドライバーのヘッド重心は大きく後方にズレてしまっていることがわかると思います。このズレを「感じて」いないと、振り遅れや右プッシュの原因となる場合があります。上手い人は「ヘッドの重さを感じろ」と教えますが、私の解釈ではこれは「重心のズレを感じろ」という意味だと思っています。
でも、感じろといわれても感じられないのが普通の人です。それならば、見えるようにしてあげたらいいのではないか? それがクラウン上に重心位置を示す「視覚重心点」デザインの始まりです。このデザイン、一度だけツアーステージV-iQに採用されたことがあります。でもその時はいまひとつ「活用法」が説明しきれていなかったと思います。
アイアンの場合はフェース面上の重心が見えますから、これとシャフト軸を重ねます。写真はPWです。
今、やっている検証は、各クラブのヘッド重心とシャフトの中心軸を直線上に「重ねた」状態でスクエアグリップし、その握りのままフェースが目標に向くようにアドレスを行うセットアップの仕方です。手順は次の通りです。
絵が下手すぎて申し訳ありません(汗)
STEP1は、なんとかご理解いただけると思います。ヘッド重心とシャフト軸を重ねるとフェースは左を向きますが、それは気にせずこの状態でスクエアに握ってください。
ポイントは、指の腹にしっかりとクラブの重さがまっすぐにかかっているように握ることです。「重さ」を丁寧に感じてください。目的は重心と軸を重ねることではなく、指で「重さ」を受け止めることにあります。握らずに受け止めるのが大事です。
STEP2は、ちょっと難解かもしれません。STEP1の握りのまま、体の正面で時計回りで円を描くように腕を動かしてみてください。こうすることで肩甲骨が動きニュートラルな肩のポジションで構える準備が整います。
STEP3は、STEP2の流れのままフェースが目標に向くようにします。STEP1では左を向いていましたが、STEP3では意外にまっすぐに構えられることがわかると思います。逆に言えばグリップを握り直さず、フェースがスクエアに向くセットアップを探りあてることが大事だと思います。
これは5番アイアンです。ロフトのたったアイアン番手はシャフト軸とヘッドの重心はズレていません。つまり、一般的なスクエアグリップでフェースコントロールしやすいのはロングアイアンということになります。
やってみていただくとわかりますが、このセットアップ方法では、深重心クラブ(シャフト軸とヘッド重心がズレている)ほど「フックグリップ」のようなアドレスになります。
ドライバーでは、自然に右肩が下がり、ややグリップの下からクラブを支えるような握りになるのです。ポイントは、同じ手順で構えてみると、浅重心のロングアイアンでは右肩も落ちず、スクエアグリップのまま構えられることです。
この手順で構えてみると、番手毎に構え「右手の開き具合」が異なってくることが分かるのです。これまで、フックに握る人は全番手同じようなイメージでグリップしていませんでしたか? スクエアグリップにしても、全番手同じようにスクエアに握っていましたよね?
でも、もしかしたら、番手の性格に合わせて微妙に握りを変えた方が良かったのかもしれません。
そんなこと、難しくてできませんよね(汗)
だからこそ、STEP1の要領で全番手「シャフト軸とヘッド重心を重ねてから握る」で統一したらいいのではないかと思った次第です。そうすれば、とても自然に、無意識に番手に適した「構え」が作られるような気がしています。
きっと、上手い人たちは、ヘッド重心を感じることで、クラブ毎の調整された「構え」を実践できているのではないかと考えています。
全番手に「視覚重心点」がデザインされていたら、ゴルフがシンプルになると思います。ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッド、アイアンユーティリティ、アイアン、ウェッジ、パター。それぞれに重心特性は異なっています。ロフトによっても軸ズレの大きさは変わります。
軸ズレが大きいという意味では、ドライバーとウェッジが「仲間」です。どちらもフェースを目標に真っ直ぐむけた状態でスクエアに握ると、振り遅れてしまう可能性が高いと思います。
ドライバーとアイアンは同じスイングでいいのか!?みたいな特集があったりしますが、こっちのドライバーとあっちのドライバーでは違うでしょうし、同じアイアンでも5番と9番では違うと思います。本来は手にしたクラブ毎にうまく振れないといけないのです。しかも、無意識に、同じことをやっているつもりで「微妙に変わってしまっている」ことがベストです。重心を感じる、ズレを知るということは調整能力を発揮するために欠かせないスキルだと思います。
「視覚重心点」がうまいこと活用できれば、クラブ毎の無意識アジャストが可能になるのではないかと考えています。個人的には非常によい感じです。ご多分にもれず、この方法が合う人もいれば、まったくうまくいかない人もいるでしょう。万能な方法などありません。ご自分でよき方法を見つけていただければと思います。