ノンペナルの罪

バンカーは何のためにあるのか。これは奥深いテーマである。ゴルフコースを語るとき、ここで大きく議論が分かれる。戦略型と可罰型という分別があるのだが、バンカーのほうが芝地よりライが整っていてはこの議論に至らない。

日本のグリーンの均質性は優れているし、来日する選手もお世辞抜きに褒めている。フェアウェイがフェアなのか、伸びてないラフの難易度はどうなのか、芝密度がどうなのか、倒れた芝目がどうなのか、コントロールしきれないところにアンフェアが潜む。

何処にボールが止まるとアンフェアで、どのくらいボールが沈むとアンフェアで、どのくらいの難易度が妥当なのかを意識したPGAツアーのコースセッティングは丁寧だ。バンカーも柔らか過ぎれば水をまき、レーキ跡の溝の深さも意識する。バンカーはそれなりに意味を持たせた場所に配置されているのだから、それなりの難易度がなければ可罰性もなく戦略性も低くなる。

 

ダブルハザードはアンフェアだという意見もあるが、バンカーのエッジの高さやあごの高さが生むアンフェアと比較してみたらよくわかる。フラットなバンカーでも止まった場所によって難易度は大きく変わるが、その殆どはターゲット方向に難なく打てる。だが樹の裏側に止まった球にその選択肢は用意されてない。

整備しつくされたバンカーが蔓延っているうちは知恵を使う本質的なゴルフは楽しめない。ゴルフゲームを楽しむためのフィールドとしてみたら、ゴルフコースの善し悪しの価値観が少し変わるのではなかろうか。

 

この記事を書いた人

八和田徳文

Cultivator/Norifumi Yawata
ゴルフの仕事に携わって四半世紀。ゴルファーの一人として、ゴルフコースデザイナーの一人として、ゴルフに纏わる想いを綴ります。肩の力を抜いて愉しめばゴルフはもっと面白いはず。
ゴルフコース設計家・ゴルフ文化愛好家・芝生管理アドバイザー