名器は、セットの中でこそ輝く。
まだダンロップが買収する前、
ハンティントンビーチのクリーブランドゴルフに取材に出かけたことがあった。
その時見せてもらったのが、ご覧のMASTERと書かれたウェッジヘッドだ。
ツアーウェッジの元祖ともいえ、
ボーケイの200シリーズにも影響を与えているロジャーさんの名作。
Tour Action 588の「SW」だ。
TA588は最初アイアンセットだったが、注目されたのはウェッジだけだった。
竹林さんのHI-858も中空アイアンセットだったが、ロングアイアンしか注目されず、まるでアイアン型ツアーユーティリティの元祖みたいになっている。
優れたクラブデザイナーは、単品ではなく、必ず“セット”でクラブ作りを考えた。だからこそ、たとえ使い手が単品だけを抜き出し、勝手にマイセットに組み合わせても、違和感なく溶け込むことができた。そして、長く愛されることができたのだ。
単品勝負で生み出されたものでは、こうはいかない。違和感が新鮮味としてポジティブに受け入れられるのはほんのいっときだけだ。多くの場合、もの珍しさが消えると同時に見切りをつけられキャディバッグから追い出されてしまう。
ゴルフはいくつもの道具を使って行うスポーツだ。
それは、ドライバーの次にうまく打てるアイアンなのか?
これはパターの直後に、うまく振れるドライバーなのか?
この絶好調アイアンに組み合わせてもいいウェッジなのか?
このクラブは、自分のセットの中できちんと機能するのか?
ゴルフ道具を選ぶ時は、そういう視点を持つことが大切だと思う。
もちろん、ゴルフクラブを作る際にも。
ゴルフクラブは、セットで使う道具なのだから。
ドライバーショットがよかった時ほど、その次のウェッジが大ダフリ。そういうことも単品勝負の道具選びによって引き起こされている可能性がある。小さく書いておきたい。