
ゴルフクラブのパフォーマンスを語る時、ボール初速やバックスピンの量、打ち出し角度などの数字を示して優位性を誇ることが多い令和のゴルフマーケットである。
確かに飛距離に直結する3つの初期条件を適正化することはとても重要である。ロフト選びというのはまさにこの3要素を適正化するためのもの。どのモデルがいいかといろいろ打つのもいいが、同じモデルでロフト違いを打ってみる方が大事なのではないかと思うほどだ。
今日はそれとは別に、ゴルフ道具として見落としがちなポイントについて書いてみたい。
それは「打球面」の状態についてである。
これはタイトリストのNEW TSRドライバーを打っていて改めて思ったことだが、このシリーズの打球面は細かなテクスチャが施されていて、指のハラで撫でてみるとザラザラ感が強いことがすぐにわかる。この打球面に普段使用しているウレタンカバーボールを当ててみると、キュッとグリップ力が上がった気がした。テクスチャのぶん、水分もすぐに飛びそうだし、ボールのカバーのホールド力が明らかに強そうだった。
これなら多少雨が降っていても安心だな、と自然に思った。
ゴルフコースに出て、一打に集中している時に初速だの打ち出し角だのと細かいデータのことを考えてはいない。気になるのは風の向きや強さ、雨、地面の傾斜、硬さなどである。いかに環境に合わせ、安定して“そこそこの”ボールを打っていくのか。それがゴルフのテーマである。
練習マットの上、平場出た起死回生のベストショットはゴルフコースでは望むべくもない。
それよりも、水滴一つがボールとフェースの間に介在するだけで、初速、打ち出し、スピン量も変わってしまう。実際の現場でどうなってしまうのか。そちらの方がよほど重要なのである。
タイトリストのTSドライバーは、ここ数年ずっとPGAツアーで最も使用率が高く、信頼性が高いブランドに成長しているが、おそらく、構えた時の見た目、打球音、そしてインパクト感、オールウェザーで使える安心感などを含めた「ゴルフ道具としての資質」が高いのだろうと思った。
やさしさアップのためにヘッドを扁平させることはNG。安心感を与える使い慣れた打感、打音のためにフルチタンにこだわり、設計力でカーボン複合と伍するパフォーマンスを出すために努力する。そして、オールウェザーで均一なインパクト条件を作り出す細かいテクスチャにもこだわる。特別でものすごいテクノロジーをアピールするわけではないが、こういう数字に表れない部分をしっかりと作り込んでいる。こういうところこそ、ゴルフ道具には大事だと思う。
飛ぶんですか? 曲がりにくいですか? と平場の弾道に興味を持つことも大事。でも、「ちょっとくらい雨が降っていても安心」と思えることほど、ゴルファーにとって魅力に感じることもない。そんなことを思った次第である。
フェースの薄肉化で打球面に溝が切られていないドライバーが増えたから、余計にそう思うのだろうが(汗)
ともあれ、NEWモデルを試す機会があれば、雨の中のゴルフを想像しつつ指のハラでフェース面を撫でてみてほしい。滑りそうな感じはないか? そういうこともクラブ選びの大事なチェックポイントになる。