「ひとつの道具に使い慣れる」ということ自体が奇跡に近い。そんなふうに思うことがある。変わった道具を使っていれば、“なぜ?”と聞かれ、“そんなの使ってると○○になるよ”と親切にアドバイスをくれる人もたくさんいる。
自分自身でも、結果が出ないと「やっぱりみんなの言う通りかな」と思ってしまったりする。“新車”に乗り換えたら、もっと簡単に安全に速く走れるんじゃないか? そう思うのだ。
“一生使うから”、“もうこれで終了“と自分に言い聞かせるようにしてまで買ったものなのに、意外に早く、それは「疑いの対象」に変わる。気がつけば、他の道具がまた欲しくなっているのである。
そういえば、みんなもやめておけと言ってたしな。
道具を使い続けることは、とても難しい。大半の人は、使い慣れたからこそ発揮される、その道具本来の良さを知ることなく、次の道具に手を伸ばしていく。それは普通のこと。悪いことではない。
ひとつの道具を使い続けるのにも才能が必要だ。簡単じゃない。だから、私はそういう人に憧れ、そうなりたいと願うのだ。