なぜ、短尺がビバ!なのか

45インチのドライバーと40インチの短尺ドライバー(上)

マーク金井さんがほぼ毎日「ビバ!短尺スチール〜」という感じで早朝や薄暮プレーについてSNS投稿をしている。率直に、ほぼ毎日ハーフラウンドに行くってものすごいことだなって感心する。お金が続くかな?とかそういうことではなく、ひとつのことに飽きないこと、面倒臭いと思わないことが「ものすごい」「真似できない」と思うわけである。

今日は「ビバ!短尺スチール〜」について考えてみたい。私自身も普段、43インチのスチールシャフトクラブでティーショットしているから、「ビバ!短尺スチール〜」仲間である。重たいヘッド(200g前後)でプレーしていた時は、最短40インチまで短尺化したが、今使っている「MOE86チタン」はヘッド重量185gと超軽量なので43インチくらいまで長くしても“振り重たく”ならない。

重たいヘッドと軽いヘッドでは、振りやすいと感じる「長さ」に違いがある。と個人的には考えている。

振りやすい、扱いやすいというのは人ぞれぞれの感覚なので、統一して語れるようなものではない。ゆえにドライバーの長さも、みんなにとっての「ビバレングス」というものは本来ないのである。私自身の中でもヘッド重量によってビバ!な長さが違うし、シャフトの材質(重量)も変わってしまうのだから。

あまり、○インチという数字にこだわってしまうことがないように、気を付けたいものである。

マーク氏が短尺スチールを推しているのは、ゴルフとは本来、ターゲットゲーム(狙った場所にボールを運ぶ)であるのだということに、今一度気づいて欲しいからではないかと思う。もっと、もっと飛ばしたい!ではなく、2、3打で確実にボールをグリーン付近に運ぶために。ティーショットはこれくらいの長さ、重さ、トルク、ヘッドの大きさであればやりやすいですよ〜と言っているわけである。

セントアンドリュースのクロスバンカー(筆者撮影)

まもなく「第150回全英オープン」がスコットランドのセントアンドリュース・オールドコースで開幕するが、荒涼としたリンクスコースでは400ヤードのビッグドライブはあまり意味を持たない。風との駆け引きをしながら、なるべくフェアウェイにボールを運んでいかないと小さなグリーンにボールを止めることはおろか、グリーン付近にボールを運ぶことさえ困難になってしまう。

フェアウェイに行かないロングドライブなど要らない。ドライバーなんて怖くて振れない。それが私がオールドコースや付近のリンクスコースをプレーした時の感想だった。ティーイングエリアから見えているところにボールがあることの安心感。フェアウェイセンターにボールを打ち出しても、ボールがフェアウェイにあるとは限らない無常。飛距離とは? 飛ばしとは? 高初速・高反発とは何か。普段、欲しかったものがリスクに感じてしまうフィールド。ゴルフ発祥の地といわれているのに、大きなゴルフクラブメーカーが存在していない理由がわかるような気がした。

ゴルフにおいて、目の前のホールを攻めるにおいて。青天井の飛距離、私上最高飛距離更新!など要らなかったのである。

ビバ!短尺スチール〜は、狙った方向と範囲の中にボールを運ぶことがやりやすいティーショットクラブなのだと思う。そして、日本のゴルフコースにおいても、本来は狙った方向と範囲の中にボールを運ぶことがティーショットの役割なのだと思う。スコットランドのリンクスとは違い、まっすぐ打てばそこにボールはあるし、たとえ曲がってもラフがなく、パーオンが狙えるかもしれないが。本当は“攻めるに十分な飛距離とエリア”が必ずあって、それはだいたい230ヤードも飛べば十分に到達できる。わざわざフルバックティに行かなければそれで十分な設定になっているのではないかと思う。

実際、PGAツアーでも大きな飛距離が必要がないホールでは、多くのトッププレーヤーが3wでティーショットする。全英になると5wを2番UTに入れ替えてロースピンの低弾道でティーショットする。その方が狙った飛距離、方向、場所にボールを運びやすいからだ。不必要なキャリー、飛距離はリスクしか生まないことの証明である。

自分がよくプレーするゴルフコースで、必要十分なティーショットの飛距離は何ヤードなのか? それを考えていくと、ビバ!短尺スチール〜の意味がよく理解できると思う。

使っているヘッドの重さによって、ビバ!な長さや硬さは変わると思うが、長くても43.5インチが目安となるのではないかと思う。結局、80年代までのドライバーの長さがビバ!な長さだったということである。

それ以上の長さのドライバー、つまり95年以降に主流になったヘッドの大きなドライバーとは、ここ一番大きく飛ばしたい時用の“飛ばし専用スペシャルクラブ”と考えるべき。そして、これを使うときには、飛ぶほど狙った場所には行きにくいこと、他のクラブと同じように振ってしまっては失敗する可能性がある。そんなことも頭の片隅に入れてボールと向かい合いたい。アマチュアレベルでは、思うようにいかなくても仕方がない。飛ぶとはそういうことである。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在