スクープ

クラブはもう十分すぎるほど持っているので、買いません。と思っているのだが、どうしても欲しくなっちゃったのが「TOP-FLITE L.T.GRIND」だ。たぶん70年後期か80年中期までのモデル。スポルディング社製だ。

L.T.GRINDは、リー・トレビノ(1970年PGAツアー賞金王/マスターズを除くメジャー競技で優勝経験がある)の頭文字。いわゆる、ワンプレーヤーのために作られたパーソナルアイアンだ。バックフェースのメキシカンハットのデザインが素敵すぎて、どうしても欲しくなってしまったのだ。

クラシックアイアンのほとんどが“スクープソール”になっているが、こちらのモデルもだいぶスクープ。これが届いた時に居合わせたマーク金井さんも「スクープやわー、刺さるで。手首気いつけや」言うてはりました。そう、スクープとはいわゆるソールバウンスがないソールのこと。ダフったりした時のお助け効果がない“難しい”アイアンの代表みたいなものだ。

最新アイアンの中にもマッスルバックやフラットバックのモデルは生き続けているが、クラシック時代のブレードアイアンと決定的に違うのがソールの形状だ。

ラウンドソール(バウンスが効きやすい)が採用された現マッスル/フラットバックは、同じようにトップブレードペラペラのコンパクトサイズでも、クラシック時代のそれとは明らかに違うモノ。ソールが助けてくれる分、インパクトのズレに寛容だと思う。

でも、クラブを洗い、タオルで拭きながら「なんで昔は刺さりやすいスクープばっかりだったんだろう?」って思った。ベン・ホーガンが「エーペックス’88」を出すまでは、ラウンドソールのブレードアイアンなんてほとんどなかったんじゃないかって思う。なんでだろう? 明らかにダフり方向へのミスにシビアではないか。

それでも、スクープ時代が長く続いたのは、往年のプレーヤーはスクープに難しさは感じていなかったのではないだろうか。むしろ、スクープの方がいい、スクープであるべきだとさえ思っていたのではなかろうか。

答えは結構シンプルだと思うが、このアイアンを使っていたリー・トレビノはこのアイアンで地面深くに刺すように打っていなかったのだと思う。刺さる角度でヘッドを入れていっていなかったのではないだろうか。

トレビノは名うてのフェードヒッター。ボールを意図して曲げて止めてくる凄腕だ。ソールを眺めているとインパクトでヒールから入れていくイメージが湧いてくる。そうすれば決して刺さることはないだろうなって感じた。

僕らは簡単に「難しい」やら「やさしい」やら言うが、それは必ず一方向から見たときの評価である。その逆から見たら評価もまた逆になったりするものだ。ここでも最近のテーマ、「自分にとってどうか」という視点で判断するしかないと思った。

自由でいたいなら「自在」であることを意識するべきだ。悠々としていたいのなら「自適」とは何か、自分に問うことだ。

このアイアンで地面に刺さないように打つ。それも選択肢だ。

(追加)

我がクラシッククラブ師匠から、トレビノモデルについて下記のメッセージ来ました。92年とは意外に新しいですね😁

「お久しぶりです。耕す。で拝見しました。リートレビノは1992年モデルカタログ外の限定商品です。トレビノは超ダウンブローヒッターです。おそらく既存のヘッドに刻印を入れたノンパーソナルモデルです」

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在