Who is B?

Titleist 962B DCI

タイトリストの歴代アイアンの中で、962B DCIをNo.1モデルに推すファンは少なくない。もちろんマッスルバック(MB)の路線とは別だ。現行モデルならTシリーズにつながる先端モデルの源流、それがDCIシリーズだといえるだろう。

DCIは、Direct Central Impactの略。

インパクト時にヘッド重心とボール重心を打ち出しラインに沿って一致させるという考え方。

スイートスポットをフェースセンター(当時はスコアリングラインの下から6本目付近に設定と説明)にすることで、ボールの重心とヘッド重心を揃えることに成功。低重心になりすぎることを防ぐことで、エネルギーロスと縦のねじれを軽減できると説明していた。

タイトリスト は今でも「中心軸重心設計」という考え方を採用しているが、よく考えればそれはDCIの頃から始まっているのだとなんだか感心した。

962 DCIアイアンは、97年に発売されたプロの使用を前提としたキャストのキャビティバックモデル。おそらくデービス・ラブⅢの意見を入れて誕生したものだろう。

一方、今回、紹介した962B DCIはその改良版。具体的には962 DCIをベースに造られたデービッド・デュバル用モデルだ。シャア専用ザクみたいなもの。当時、このクラブの改良を担当していたツアーレップは、デュバルとのやりとりをこう語っている。

“ He really was where the 962 B’s came from because the 962 DCI was a little bit too much sole weighted. It was a little too big, a little bit too much offset. So we ended up making the B’s basically for him. If you look at a set of B’s the sole is really…the back part of the heel is really pulled down.”

ソール面積を減らし、ヘッドサイズもコンパクトに。オフセットを弱く。デュバルは他の選手よりもローボールを好み、スピン多めの弾道を好んだという。効率化よりもコントロール性を重視していたのだと推察できる。

長年、962 DCIのオリジナルがAで、その改良版がBという解釈をしていたが、上記のコメントをしている当時のツアー担当の名前を聞いて、アレ?と思った。彼の名は、

Larry Bobka

そう、Bさんなのである。彼はボブ・ボーケイの前任者ともいえる人物でウェッジなどの開発も手掛けていた。BモデルはDCIの最終モデル990 DCIにも存在した。990・B DCI。デュバルがナイキに移行するまで使ったアイアンだ。970メタル、681アイアンの開発にも大きく関係していたというBobkaさん。あまり脚光を浴びることがない人物だが、ウイルソンではペイン・スチュワートやベルンハルト・ランガー、USTシャフトではフレッド・カプルス、タイトリストではラブIII、デュバル、ウッズと、スタープレーヤーたちのクラブを担当した、ツアーレップ界のレジェンドだ。

ヤフオクで 962B DCI を買ったので、こんな雑文を書いてみた次第である。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在