自然に自然と

JR駅の喧騒を抜け、国道をまたぐと漆黒の闇があった。街灯も信号も家々の灯りも。当たり前の明るさはどこにもなかった。

路地の向こうに懐中電灯の灯りが一つ、上下に揺れていた。自分が育った家の周りはこうだったな、と想い出した。夜、一歩外に出れば、普通に、ありえないくらい、マットな闇だったんだ。

大規模停電。

一応「首都圏」でもこんなに暗くなるんだな、とちょっと驚いた。

リビングに横になると、月灯りが明るかった。入ってくる風が心地よかった。虫の声しか聞こえなかった。

電気がないとたしかに困る。でもそれは電気があることを前提とした暮らしだからだ。電気がなかったなら、暮らし方を変えるだろう。電気のない世界は、ありえないくらい静かだった。不便だけど、どこか穏やかだったかもしれない。

寝転び、月の前を流れる雲をみていた時、小さな懐中電灯の灯りさえ眩しく邪魔に感じたんだ。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在