小さいヘッドの意味

左が460ccフルサイズ。右は230ccのMOE86。

小さいチタンヘッドで練習していると、知り合いが“また難しいの打ってますね”と声をかけてきた。小さいヘッドは慣性モーメントが小さくて打点ズレの弱そうだし、構えた時に小さく見えるのがそもそも難しく感じさせるのだろう。みんな、大きなヘッドに慣れちゃってるからなおさらである。

でも、構えてもらったら“意外に小さくないですね”ってなる。なぜなら、シャフトが43.5インチと短いからだ。普段使っている3wと同じ長さで230ccもあったら、それは逆にデカ!ってなっても不思議でない。ヘッドの大きさと長さによって見え方の印象はものすごく変わる。

だから昔から“見た目ヘッド体積”が重要だって思っている。短く使うのに400cc以上はバランスを欠く。逆に46インチで使うなら、300ccじゃ不安が出る。短くするならヘッドを小さく。長くするなら大きくしてもいい。それが基本である。

かなり低めにティペグを刺したが、これでもちょっと高いですね。

ヘッドが小さいことの意味は見え方だけではない。個人的には「ティアップが低くてよくなる」ことも大きなメリットで、あえて小さいのを使う狙いの一つでもあると思う。

460ccのフルサイズが標準になってから、ゴルファーの携行するティペグは超ロングタイプとなった。ひと昔前ならジャンボ尾崎仕様だったハイティアップ専用ティが、現在の標準となって久しい。

大きいヘッドはフェース高もあるし、低いティではフェースの真ん中から下にしか当たらない。だから空中高くボールを浮かせ、インパクトロフトが付くように当てても フェースセンター/それより上 に当てられるようにハイティアップにしないとならんのだ。

でも、空中高くボールをセットすればするほど、アマチュアの場合、打点が上下にバラついてくることは避けられない。ボールの下にヘッドが入る余地があると言うことは、それだけヘッドが色々な軌道で通過する空間が広いということなのである。

今年作成したオリジナルの「無垢ティ」は長いタイプで60mm。460ccのヘッドを使ってる人にはちょっと短いと感じられるかもしれない。

230ccのMOE86のアドレスビューをSNSに投稿したら“直ドラですか?”ってコメントが来たけれど、そう見えるくらい練習マットでのティアップも低めだ。460ccの人は3Lのゴムティを使うが、MOE86の場合はM、厚めのマットでもLMである。フェアウェイウッド並みのティアップでいいのだ。

ボールの下にヘッドが入る余地がないと、実はフェースの縦方向への打点ズレはほんとに少なくなる。テンプラなんてなりようがない。 フェースに当たれば、まぁまぁいいとこに当たってることになる。

こういうのを読んで「低いティアップやってみようかな」と思った人もいるかもしれないが、やってみるとたぶん、打点ズレの少なさに驚くとともに「ボール上がんないな」って感じるはず。それはもちろん、普通の人が使っているドライバーはハイティアップでインパクトロフトをつけて当てることを想定したヘッドだからである。

MOE86は、それこそ直ドラでもちゃんとボールが浮くようにと考え、ロフトが13°になっている。だから、低いティアップでもきちんと上がるのである。

MOE86は185gの超軽量ヘッド。230ccのコンパクトヘッドだ。

重量的には最新ヘッドのウェイトを外せば似たような重さにすることができるかもしれない。しかし、それは単純に軽い460ccにしかならない。では、230ccのチタンヘッドは? ヤフオクで探せば90年代の有名ブランド品が捨て値で手に入る。でも、それはもれなく、200gきっちりのヘビー級ヘッドだ。そして、最新460cc、オールド230ccのどちらにも13°などというハイロフト設定は存在しない。ヘッドの重さもそうだが、ロフト設定も既製品流用ではかなりネックとなるものなのだ。

MOE86を作るにあたっては、当然、その前に今まであったヘッドでなんとかできないかと、数年間に渡るさまざまな試行錯誤があった。マニアックな人たちが散々トライして、結局、“これはどうやっても無理。もうイチから作ってしまうしかない!”となって生み出されたわけである。

今、ヘッドのウェイト外しや、短尺化、スチールシャフト化などをすれば“夢のような何か”が起きるんじゃないかって気がしている人もいるかもしれないが、既存のクラブでそれをやってみようとすれば、コトはそんなに単純ではないと気づくはず。

シャフトの長さ、重さの適正は、ヘッドの重さに大きく影響される。そして、長さによってはヘッドの大きさも重要になる。それは見た目だけではなく重心設計的にも。そして、一番難しいのがロフトだ。直ドラでも打ち出し角度が得られるようなヘッド/ロフトをできれば探したい。そんなことが都合よくハマってくれる既製品などはない。そう思って作られてはいないから。

最も賢いのは、MOE86を手に入れたり(大阪のヤードスティックに聞いてみてください)、短尺スチールに興味があるなら、それこそマーク金井さんの真似をしちゃうこともオススメ。途方もないトライ&エラーを重ねてたどり着いた「結論」には、素直に乗っかったほうがその先のラウンドに時間とお金を使えると思う。

もちろん、彼らと同じように数年にわたって試行錯誤をしてみるのも楽しいとは思うが、結果は先人たちが出した答えと同じになるとも思う。そして多くの場合、結果が出る前に試行錯誤をやめてしまうだろう。コトはそんなに単純ではないからだ。

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在