ここのところ2回にわたってグースネックではなく、オンセットかオフセットかを眺めてみることの面白さ、について書いてみました。まだ見てないという方は下記の順に読んでから、今日の雑文に進んでいただければと思います。
では、先に進みます。
ここまではウェッジクラブでのオンセット/オフセットについて書いてきましたが、この視点でロングアイアンを見てみると、コレまた興味深いのです。それでは見てみましょう。
こちらはPINGの名アイアンモデル EYE2の#3です。
超が付くほどのオフセットですね。シャフト軸線からだいぶ後ろにヘッドがあります。
では、次の名器を見てみましょう。
こちらは国産プロモデルの雄 ミズノプロTN-87の#3です。
ご覧の通り、こちらはオンセットです。
アイ2とTN-87。どちらが珍しいかといえばTN-87の方かもしれません。アイアンセットはたいていショートアイアンがオンセットでロングアイアンにいくほどオフセットだからです。TN-87のようにロングアイアンが出っ歯というのは、セオリー通りではないのです。
これについてはミズノテクニクス(養老)のアイアンマイスター野村武志さんも「ハチナナのフェースプロ(F.P.)が面白いでしょ。なんでこんなにロングアイアンで刃を出したのか。当時はオヤジ(小原敏幸さん)と中嶋プロの2人で全部話し合って決めていたので、僕らは何も知らんのですが、おそらく中嶋さんが高さを求めたんでしょうね」と言っていました。TN-87は中嶋常幸プロのパーソナルモデルなので、セオリーとかは関係なく、プロが打ってよければそれが正解だったのだと思います。
ロングアイアンがオンセットということは、例えは極端ですがフェアウェイウッドのようなフェースのつき方をしているということです。インパクトでロフトが立ちにくいぶん、確かに打ち出し角が高くなるような気はします。
果たして、これが異端かということですが、このTN-87のロングアイアンはのちに超スーパースターの出現で再び脚光を浴びることになります。
1995年タイガー・ウッズがデビュー。そのキャディバッグに入っていたのが、ミズノMP-29とMP-14アイアンでした。MP-29はTN-87の米国モデル名。ウッズは、ミドルアイアンからショートアイアンはMP-14というキャンバーソールでコンパクトなアメリカンブレードアイアンを選びつつ、ロングアイアン(#2、#3、#4)はあえて、別モデルのMP-29を組み合わせて使っていたのです。
TN-87 (MP-29)のF.P.のあり方は、通常アイアンのそれとは違う流れになっていたのかもしれませんが、中嶋プロの狙い、設計意図の確かさはウッズによって証明されたのではないかと思ったりしています。