選択の順番

少しずつ腰の具合が良くなってきたので、少しずつボールを打ってみている。ヘッド重で、長尺・軽量で、シャフトが軟いドライバーはまだ怖くて打てない。腰が良くない時は、ヘッド小さめ、ヘッド軽で、シャフトが重ため、硬めのやつがいい。腰や肘への負担が少ない。大丈夫だ。

シニア向けのクラブは、ヘッド重で、長尺、軽量で、シャフトが軟いものが多いけれど、これ何でだろう?と思う。これをシャープに振るにはものすごくパワーが要る。だからシャープには振れないので、クラブに合わせてゆっくり振ることになる。もっと振れるのに、それを抑えてクラブに合わせて振るようになる。

気がついたら、振れない人になってしまっている可能性が高いんじゃないか。最近、ほんとにそう思うのだ。

それは、ヘッドの軽いドライバーやアイアンを使ってみているからだと思う。一般的なヘッドよりも20g前後も軽いヘッドにしてみると、世界が変わる。

ヘッドを軽くすると、重たいシャフトを付けたくなる。ドライバーでもスチールでよくなったりするのだ。マーク金井さんも短尺スチールシャフトドライバーを“ビバ〜”と言っているけれど、この場合、「短尺」というのがポイントだ。200gのヘッドに45インチのスチールシャフトはまさにヘビー級だが、43インチ、42.5インチならちょうどよく振れる。スチールが重たいのではなく、長いから「振り重たいのだ」ということにやってみれば気づくことができる。

そして、いくらクラブ総重量を280g以下にしても、長くて、ヘッドが重たくて、軟らかいシャフトでは「振り重たい」と感じられてしまう。軽くても振るのに力が要るクラブというものがあることにも気づけるのだ。

スチールシャフトのドライバーを使っていると、「やっぱスチールいいですか!」と思われてしまうが、同じスチールシャフトを同じ長さで組んでみると、振りやすさにかなりの違いがあることがわかる。なぜなら、ヘッドの重さがそれぞれ違うからだ。

185gのMOE86ヘッドなら、N.S.950 DR(X)43.5インチで良かったが、それよりも15gは重たいヨネックスEZONE380やミズノCRAFT425では多少振り重たく感じた。もう少し短くしないと気持ちよく振れないと思う。スチールならばいいのかってことではないのだ。それはヘッドの重さによる。

ゴルフクラブを選ぶ時、「ヘッドの重さ」から決めていくことってまずないと思う。

逆にドライバーならヘッド重量200gでだいたい合ってしまっているから、シャフト選びが「フィッティング」の始まりみたいな流れになっている。でも、もし「ヘッドの重さ」に選択肢があってそこから最適探しが始まったなら、シャフトの重さと長さの概念はまったく違ってくる。

もっと重たくても振れる。もっと短くても速く振れる可能性が出てくるのだ。

ヘッドを軽くするだけで、もっと重たくて、短いドライバーを“シニア”だからこそ使ってみて!ということができるのではないかと思うのだ。

なぜなら、そういうドライバーは、自分で速く振ることのできるクラブだからだ。

振れなくなってきたと悩む人たちに「振らなくていい」クラブを提案するのは一見、親切である。しかし、振れない人に楽できる道具を渡してしまえばどんどん振れなくなっていく。

その逆に、振りやすいクラブを提供し、自分自身の「振るチカラ」を活かして飛ばしてもらった方が、結果としてゴルフを長く楽しんでもらえるようになるのではないか? それが軽量ヘッドを試していることの意味だ。また、飛ぶ、飛ばないよりも「振り重たい」クラブではゴルフスイングによって身体を痛める可能性があり、ゴルフ寿命が短くなる危険性を感じるからだ。

・ヘッドの重さを変える

・クラブの長さを変える

・シャフトの硬さを変える

最適選びの順番は、クラブとしての基本的な「スケール/スペック」を試行錯誤する中で見えてくる。

△同じヘッド重量の中でモデル/ブランドを変える

△同じ長さでシャフトのモデル/ブランドを変える

△同じ硬さでシャフトのモデル/ブランドを変える

ことをしても、なかなか「答え」は見つからない。そもそもの「スケール」が合っていないのかもしれないからだ。

ヘッド重量が200gで選べなかった今までは、超短尺にしたり、超カウンターバランスにしたり、超硬いシャフトにしてみたり、振りやすさを求めてとにかく色々なことをしてきたが、ヘッドを15g軽くするだけでそんな無理なことをしなくても済むということがわかってきた。ヘッドが15g軽いだけで、ドローバイアス設計も弱くて済むし、シャフトのアシスト(過度な走り)も少なくて済む。シンプルで見た目通りの機能が備わっていれば十分だと思うようになったのだ。

ドライバーにスチールシャフトというのが、自分にとっては、見た目通り、感じた通りの動きをしてくれる“振りやすく”て、“扱いやすい”ものだったということ。アイアンとの繋がりもよく感じるものだったということ。

もちろん、何が振りやすいのかは人によって違うと思う。何を求めるかでも違うだろう。

あくまでも個人的には、これからのドライバーは重心ではなく、ヘッド重量を手軽に可変できるようなウェイトシステムを搭載したらいいのではないかと思う。今のクラブ作り、可変システムを批判・否定するつもりは毛頭ない。あくまでも選択肢としてあったらいいのでは? と思うだけである。

この話題をここまで書くのは、これで終わりかなと思う。色々な視点で色々なことを、楽しみながらやってほしいと思う。クラブを使う人も、作る人も。

何気なく書き始めたが、卒論みたいになった。

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在