終わらせてはもらえない物語

MOE86ウェッジの 1st SHIPは制作者、浮世氏愛用ウェッジと同じ摩擦係数の低い特殊なメッキを施して完成。

ドライバーヘッドの自主制作から始まった「MOE86」は、結局アイアン、フェアウェイウッド、ウェッジにまでその裾野を広げることになった。いや「作ることになってしまった」と言った方が制作者の心情とすれば正しいかもしれない。

最初は確かに、他のクラブに対して飛び抜けて長尺で、ヘッドが明らかに大きく、ひときわ軽量で、軟らかいシャフトが装着された現代ドライバーの違和感を払拭するため、軽量チタンヘッドを自主開発したのが始まりだった。

そして、振りやすく、他の番手(クラブ)との首尾よく繋がった、どこにも売っていない185gの軽量チタンヘッドが完成した時に、このプロジェクトは終了したはずだったのだ。目的は達成した、

「もう、これでええやろう。」と。

しかし、実際はそれでは終わらせてもらえなかったのである。ティショットが軽量ヘッドでハマり始めると、他の番手も同じコンセプトで揃えたくなるのは人情だ。「他のアイテムはないの?」 愛用者から声が上がった。

じゃあアイアンも作ろう。アイアンができたらウェッジも、せっかくならばフェアウェイウッドもやるか、となっていった。面白みは、クラブ同士の繋がりを考えて始まったモノ作りが、最終的にはMOE86というコンセプトクラブを媒介としたゴルファー同士の繋がり、コミュニティへと育っていったこと。

ついには、MOE86を大切に売っていきたいという同志も現れた。

「もうええやろう。」

作り手がそう思ったところから、新しいゴルフのストーリーが始まっていく。

物語は道具ではなく、人が紡いでいくものだ。

販売は大阪のセレクトショップ「Clubhaus」で。同ショップではMOE86の組み立てを行う「LABORATORY」を新設するほどの気合いの入れよう。現在、特殊メッキの53度・59度をセット77,000円(特殊メッキ/ヘッド単体/税込)で販売中。数量限定。
ウェッジヘッドも実測289gと軽量に仕上がっている(実測は特殊メッキの場合)。ちなみに一般的なウェッジヘッドは300g超である。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在