ウッズ先生

ファーマーズ・インシュランスオープン 2020。ついにウッズがボールをチェンジした。

タイガー・ウッズと使用契約したことで、ブリヂストンのゴルフボール開発チームは、大いなる“気づき”を得たのだと思う。

TOUR Bの最新作で、アプローチの操作性を高めるため、衝撃吸収材を配合したREACTiVウレタンカバーを採用し、低初速を追求したというのだ。

もちろん、コアとインナーカバーによってロングショットでの初速性能はさらにアップしているが、アプローチでは“低初速を追求”。つまり、飛ばさないようにしたのだ。

飛ばさない工夫なんて、ここ最近のゴルフギアの開発話には出てこなかったワード。これだけ聞いてもテンションが上がる。

タイガー・ウッズは今のTOUR B XSの前身、B330Sの性能に惚れ込んで、同社とボールの使用契約を結んだ。気に入って契約したボールだから、開発陣が改良点について質問しても“このままでいい。何も変えて欲しくない”と変化を拒んだ。だから、現在販売されているTOUR B XSは、モデル名は変わったが性能はB330Sのまま。いたずらに新しさを求めないウッズもかっこいいし、それを受けて変えない選択をしたメーカーも潔しと拍手を送ったものである。都合4年、同じ性能のボールを売り続けたことになる。

すぐにモデルチェンジ、ブランドチェンジする今のゴルフ界では異例のことである。

しかし、そのTOUR B XSにもついにモデルチェンジの時が来た。それが1月22日に発表されたNEW TOUR B XS。アプローチでは“低初速を追求”したボールだ。

パッティングとショートゲームでお試ししてみたNEW TOUR Bボール。

私は普段、タイトリストのプロV1を使っているが、たまにブリヂストンボールを使うと、アプローチでフィーリングの違いを感じることが多かった。

TOUR B Xだとカツっと硬く感じ、XSだと音がしなさすぎてふわっとした感じがした。そして、どちらもなんとなくインパクトでの球離れが速いような気がしていた。自分が思ったよりも、ポンっ!と高く飛び出してしまう印象があったのだ。そのポンっ!と飛び出す感覚は、ドライバーでは好感触となり、グリーン周りでは違和感となっていた。いいとか悪いではなく、使い慣れていないから。打つたびにちょっと驚いた。

そんな私が(笑)、新しいTOUR B XとTOUR B XSをグリーン周りで試してみた。

感想は、NEW TOUR B Xがフィーリング的にかなりいいと思った。前モデルは硬さを感じたが、ニューモデルはそれがいい意味での“打ち応え”に感じた。衝撃吸収材配合カバーということがすでにインプットされているので、インパクト音も前モデルよりも低く、かなり落ち着いたものに感じられた。説明を信じることは、とても大事なのだ。

一方、NEW TOUR B XS。これは私には静か過ぎに感じた(汗) もともと軟らかさを感じるボールだが、新カバーの採用でさらにソフト感(個人的には静か感)が増した印象。個人的には音を欲しがって、パットでは強めに打ちたくなる衝動にかられた。ここでは衝撃吸収という予備知識がネガティブに働いたと思われる(笑)

ウッズはこのNEW TOUR B XSボールについて、「ドライバーでは飛距離がアップ。しかもグリーン周りではよりアグレッシブに狙っていけるようになった」と最大級の賛辞を送っている。強めにヒットしても穏やかに飛ぶ、転がる。確かにウッズのショートゲームスタイルにはぴったりのボールに仕上がっているのだ。だからすんなり替えたのか、と妙に納得した。

ウッズがボールチェンジを望んでいなかったのは、ドライバーの飛距離に満足していた訳ではなく、そこを追求していくと大切なショートゲーム、パッティングでのフィーリングが変わってしまうことを知っていたからだろう。今回のカバーの特徴である衝撃吸収性能とは、中間層とコアの反発アップに対するショートゲームでの違和感を吸収(中和)するために必要だったのではないかなぁ、と思ったりする。

寄せやパットでのフィーリングをベースにボールを選んでいる人を見ると、ゴルファーだなぁと思う。ドライバーの飛距離しかいわない人を見ると、ゴルファーなのかなぁ?と思う。道具も同じ。飛距離にばかり焦点が当たると、ドラコン用?と思ってしまうのだ。

今回のNEW TOUR Bボールは、ゴルフするために進化したことをしっかりと実感できるものだった。やはり、タイガー・ウッズの存在は大きい。よりよいゴルフをするために何が大切か。その優先順位に気づかせてくれる、素晴らしい先生である。

 

新しいTOUR Bボールについてはどうぞ、こちらを。

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在