“視覚硬度”を無視するな。

寄木の端材をコースターにして早や3年。

長く使うほど、かっこよく育つ。

S20CとかS25Cという種類の炭素鋼がアイアンヘッドには使われています。ステンレスに比べて軟らかいとされており、そのぶん、曲げやすく、折れにくい素材だといわれます。ロフトやライ角度を調整しやすい、といい換えても差し支えないと思います。

なので、逆にロフトやライ角度を調整しないのであれば、軟鉄にこだわる必要はないというエンジニアや識者が多いです。よくいわれる「軟鉄鍛造ならではの軟らかい打感」は、素材の硬度ではなく、製法でもなく、マッスルのような分厚いフェース厚に起因するものであると。たしかに薄い軟鉄鍛造フェースがマッスル打感かといえばそうではないですね。マッスル打感はマッスル肉厚ならではのものだと私も思います。

ミラー仕上げがアタリ傷によってサテンになっていくのがかっこいいですよね。

でも、ステンレスと軟鉄ではやはり軟らかさが違うと思うのです。それは「見た目」の違い。ここでは勝手に“視覚硬度”と名づけます(汗) 軟鉄鍛造のマッスルアイアンを数ラウンド使っていくと、クラブ同士がカチャカチャ当たって細かい傷がついていきます。このアタリ傷が鏡のようなミラー仕上げの強い光を、マイルドにしていくのです。硬いステンレスは簡単には凹まないため、軟鉄のような光と影のコントラストは愉しめません。当たったところが黄色っぽいスジになり、汚いヘッドになっていくだけなのです。

見た目から受ける印象は、ときに振動から感じ取るフィーリングを超えて作用します。軟らかそうに見えれば軟らかいフィール、硬く見えれば硬いフィールだと、見た目のままに評価されることも珍しくはないと思うのです。

“視覚硬度”などというと、「またマニアックなことを」と一笑に付されることも多いわけですが、アイアンのブラスト面の色が薄い、濃いだけで打感は違ってくる、そんなことを比較的真面目に考えています。PING EYE2も硬いberyllium copperのほうが軟らかいといわれたりしますが、これも“視覚硬度”が軟らかいからだと思います。

で、最初の寄木のコースターはなんだったのか?

使い込むごとにアジが出る、傷さえ愛おしくなる素材が私は好きです。そう言いたいのです。大事に手入れしながら、長く使うほどに愛着が増す「育っていく道具」がいいなぁと。とはいえ、道具を長く使うのもひとつの才能でありまして……。そろそろひとつの道具に絞って、じっくり残りのゴルフ人生を愉しんでもいいんでないかい?と、自分自身に問いかけている毎日です(笑)

 

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在