グース出っ歯とグースストレート

グースか否かというタイトルで書いたお話の続きです。読んでいない!という方は先にこちらをご覧ください。

ネックが曲がってることよりも。シャフトの軸線に対してリーディングエッジがどこにあるのかを見ると、違いがわかりやすいですよというお話をしました。

その視点で、下記をご覧ください。

シャフトの軸線よりもリーディングエッジが前に出ています。これが「オンセット」「フェースプログレッションが大きい」と言われる状態です。シャフトの中心軸に点線を入れてみると、出っ歯になっていることがわかります。

では次に、下記を観ていただきます。

同じようにグースの入ったネックのウェッジですが、出っ歯になっているでしょうか? シャフト中心軸に点線を入れてみます。

リーディングエッジは前に出ていません。これが「オフセット」「フェースプログレッションが小さい」と呼ばれる状態です。こうやってみると、ふたつのウェッジは同じように見えて違うものに見えてきますね。こういう気づきが、ゴルフクラブを眺めることの面白さだと私は思います。

一枚目の写真、ソールに「S」と「L」と刻まれています。

これはPING EYE2というアイアンセットのウェッジですが、このアイアンを設計したカーステン・ソルハイムは「S」(サンドウェッジ)と「L」(ロブウェッジ)で求められる機能を生み出すために、同じセットの中ですがその形を変えてデザインしたのです。

「S」はバンカーショットを成功させるために。「L」は打ち出しの高いロブショットをシンプルに打ちやすくするために、それぞれ違う設計がしてあるのです。やりたいことが変われば、道具の形は変わる。それが当たり前だということです。

今、ウェッジには「S」や「L」と刻まれなくなりました。その代わり、ロフト角とバウンス角、ソールの形状を示すグラインド名が刻まれています。ゴルファーも、数字を見るようになりました。決められたロフト角度を境にピッチング→ギャップ→サンド→ロブと名称が変わるかの如くです。

対して、PING EYE2ウェッジには、ソールに「S」、フェーストゥ部にも「S」と刻まれています。今では当たり前のロフト角・バウンス角表記はありません。それどころか当時はロフト角度の公表すらされていませんでした。きっと「数字」を知らせることが大切なことではないからだと思います。その道具で何をしたいのか? どのようなショットを打ちたいのかということが最も大切。「S」はサンドウェッジとしての使命を果たしているのか? 「L」を使えば首尾良くロブショットが決まるのか? そこだけを気にしてよ!とカーステンは言っているような気がします。

意識して見れば、全然違う「S」と「L」。でも、そういう視点がなければ全く気づかれることがない。同一セットのウェッジとして普通に受け入れられている。そこが最も凄いところです。

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在