グースか否か

ホーゼルがヘッド後方に曲がっているウェッジを“グースネック”と呼ぶ。真っ直ぐでないさまが、ガチョウの首みたいにみえるからだ。

グースネックにすると、つかまりやすいとかいわれる。個人的にはつかまる、つかまらないはネックの曲がり方ではなく、リーディングエッジの出方(フェースプログレッション)の話だと思うが、一般的にはグース・ストレートというネック形状の話になってしまっている。

ちなみに海外では、オフセット、オンセットとヘッド(リーディングエッジ)がシャフト軸線にかかっている(乗っている)か、いないかでこれを表現していて、ネックが曲がっているかどうかはとくに差別化ポイントにはなっていない。

冒頭の写真。リンクスのマスターモデルは、70年代〜80年代に日本のプロや上級者の間で流行った「グースネック」のウェッジだ。構えた感じは下記の通り。

シャフトの軸線に対して、リーディングエッジが前に出ているのでこれは「オンセット」である。たしかにネックはややグースだ。

このウェッジを自分でカスタムして使うのが、当時の日本においてはポピュラーだった。下記の写真のようにである。マスターモデルの刃を真っ直ぐにしただけでこうなる。

リーディングエッジを真っ直ぐに削ってしまうと、急に「グースネック」に見えてくるがネックはとくにいじっていない。単にリーディングエッジが後方に下がりオフセットになっただけだ。これによって、ノーマル(オンセット)よりロフトを立てて当てやすく低く打ち出しやすくなる。

オフセット(フェースプログレッション)が変われば、重心アングルも変わる。これでつかまり方、つまりインパクトロフトが変わってくる。

日本では、このマスターモデルのリーディングエッジをストレートに削り、スクエアにヘッドを動かして低く出し、スピンを効かせて止めるウェッジが主流となった。これは硬いコーライ芝の受けグリーンで寄せるためのテクニックだったといえるだろう。このややグース&ストレートリーディングエッジの集大成がブリヂストンのJ’sウェッジだったといえる。日本のコース環境に則したツアーウェッジの進化だ。

一方、アメリカではマスターモデルもオンセットのまま使われることが多かった。ボールが沈みやすい芝種、時にはフェースを開いてボールを高く打ち出して止めるテクニックが必須だったからだ。硬いベントグリーンが主流となった80年代以降のPGAツアーでは、クリーブランドTA588が登場したことでオンセットウェッジ(ティアドロップ)が主流となり、オフセットウェッジは姿を消して今に至っている。

グース、グースというが、本来そこは重要ポイントではないのだ。グースで出っ歯なマスターモデルやPING EYE2のLWを見るたびにそう感じる。オンセットかオフセットか。バリエーションの目的、意図を理解し、言葉を正しく選んで使いたいと思う。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在