売っていない道具をPRする意味

お友達が私費で作った「MOE86アイアン」

MOE86アイアンのトークショーに呼ばれたので大阪まで行ってきた。ギャラは愛情たっぷりの「お手製おにぎり」2つだ。何度か「耕す。」でも書いているので過去記事を探して欲しいが、このMOE86シリーズは浮世憲治という人が自分で使うために「金型」から起こして私費で作ったモノ。開発には浮世氏の知人友人のゴルフクラブに詳しい人が参集し、ヤードスティックの創業者、山代谷哲男氏が設計・生産実務を請け負った。

チタンヘッド一個、アイアン1セットで作ってくれる工場なんかないので、いわゆる生産ミニマムの数量を作っている。詳しくは聞いてないがウッド100個、アイアン150セット。そんな感じの世界だ。そこから浮世氏が使ったり実験したりする分を除いた残りを、「欲しい!」となった知人に適価で譲る。一部、売ってみたい!となった知己のショップにも残りが置いてあるといった感じだ。

基本的には「個人が使うために作ったモノで、売るために作ったモノではない」。これがMOE86シリーズのあらましである。

軽いヘッドだから、打ちながら必要に応じて鉛を貼る。

売るためじゃないモノのトークショーなんて、なぜやるの? ということだが、これは「どうしてMOE86というクラブを自分で作らなければならなかったのか」。その理由をもう少し広い範囲のゴルフ好きに知ってもらいたかったからである。「だから大阪まで来て」と呼ばれたので、仕方なく(笑)行ってきたのだ。

MOE86は作りたかったモノではなく、作らなければ仕方がなかったモノだ。

数十年、いろいろと既製品で試行錯誤してきた結果、見えてきた「扱いやすいゴルフ道具」の姿があった。そして、それはここまでのゴルフ史には存在していなかったモノだった。だから、作らなければ仕方がなかったのである。

存在するモノを工夫しながら使いこなしていくのは、ゴルフの本質。間違っていない取り組み方である。浮世氏も長らくそれやってきた。長らくそれをやりすぎた結果、見えちゃったモノがあるので作らなければ仕方がなくなってしまった。原点はよくいるゴルフ好き、道具好きと同じである。

「ヘッド側を持って、グリップを下にして振ってみたらどうなるでしょう?」

誰だってそうすれば、ビュンビュンと軽快に振れることはわかるはずだ。普通にグリップを持って振ったら、とてもそんなふうには振れない。でも、ヘッドでボールを打たなければダメなんだから「仕方がない」。誰もが振りにくいことは承知の上で、通常のクラブでうまく打てるように頑張っているわけだ。浮世氏は「だったらヘッドを軽くするしかないよね」となった。簡単に言うとそういうこと。

なんでもそうだが、逆から見てみること。常識を疑ってみることって大事である。そして色々と自分でやってみること、考えることが最も必要なことで愉しいことである。たぶん、そのことをもう少し多くの人に知ってもらいたかったんじゃないかって、始発の新幹線で東京に戻りつつ思った。

【余談】

最近、アマゾンプライムでバレーボールアニメの「ハイキュー」を何度もリピートしてみているのだが、その中に何度かこんなセリフが出てくる。

「スパイカーが打ちやすい以上に、最高のトスはない」

ゴルフクラブもおんなじだと思う。自分が使いやすい以上に、最高のゴルフ道具はない。誰がなんと言おうと使いたい道具を使うべき。浮世氏がなんと言おうと、俺はコレだ!と思うならそれを貫くべき(笑) どれが正解で、不正解か。そんなものはない。

柔軟に、朗らかに。色々な人の話を聞いて、聞き捨て、トライし、やり捨てて次に進む。そのうちに「ふるい」の中にキラリと光る一粒の砂金が残る、かもしれない。その砂金を手にした時に「もうええやろう」って思えるのだ。

MOE86アイアンについては、ヤードスティックCLUBHAUSに聞いてみてください。今なら数セット残っているかもです。(2022年7月5日現在)

インスタライブ(トークショー)のアーカイブはこちらです。

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在