大手ゴルフクラブブランドが新製品を発売すると、一時的に注目が集まるのがグリーン周りのお助けアイテム「チッパー」である。PINGの「ChipR」は売れそうである。
それこそヒッコリーシャフトの時代から「JIGGER」というランニングアプローチ専用クラブは存在していて、それらはウェッジというよりも大ロフトパターといった性格のものだった。PINGの「ChipR」の説明にもあるが、パターのように打つだけでグリーンとボールとの間のもしゃもしゃ(ラフ)を飛び越せ、グリーン上では安定した転がり(ラン)が得ることができる。軽く上げて、主に転がして寄せる。それがしやすい専用クラブ(エクストラ/ユーティリティ)が「JIGGER」と呼ばれた。“CHIPPER”名称のユーティリティクラブが誕生するのは、それよりもずっと後のことだ。区分は明確ではないと思うが、基本的にはパターから派生し転がし専用のクラブとして重宝されたのが「JIGGER」、それよりもロフトが大きく、ある程度打ち出しとスピンも確保できるウェッジ派生のユーティリティが「CHIPPER」なのではないかと思う。
今はルール上、ロフトが9度を超えてしまうと「パター」というカテゴリーではなくなってしまうので、なかなかパターから派生させた転がし専用クラブは発想しにくい。ルール的にも「JIGGER」は消え、「CHIPPER」が残ったのかな?と思ったりする。
ウェッジクラブはソールにお助け機能であるバウンスが付けられている。そもそもバンカーやラフなど難しいコンディションからボールを脱出するために編み出されたユーティリティクラブがウェッジである。
でも、チッパークラブの説明を読むとたいてい“グリーン周りでのアプローチ。チャックリやトップが頻発して悩んでいませんか? そんなあなたにぴったりのお助けクラブが誕生しました!”的なコピーが入っている。お助けクラブをうまく使えない人のためのお助けクラブみたいな図式になっちゃってるのだ。
そういう感じでいいのかしら?
通常のウェッジ(ピッチング、アプローチ、サンド、ロブ)は基本的にボールが上がるように設計されたもので、そもそも転がしには不向き。これらは「ピッチショット」がしやすいユーティリティクラブだ。
ランニングアプローチやチップショット(キャリー距離よりランが長いアプローチのこと)をしたいなら、専用クラブの「チッパー」をどうぞ。というべきなのではないだろうか。
ゴルフクラブは用途を理解していないとうまく使いこなせない。
上がるように設計されたクラブで低く打とうとする。転がし用なのに上げようとする。上がるように設計されているクラブなのに自分でも上げようとする。転がし用なのに自分でも転がそうとする。ふわっと上げないと止まらないのに、簡単そうだからとチッパーを持って「止まらないじゃん!」と怒る。ランを使って寄せたかったのに、スピン性能が自慢の最新サンドウェッジで打って「スピンが入って止まっちゃったよ!」と怒る。etc..
ミスの主要因は、用途を理解して、正しく使っていないからなのでは? 専用とは万能の対極にあるということを理解していないからなのでは?
歴史上「チッパー」が話題になっては消えていく背景にも、その用法が今ひとつ理解されていないことが大きくあると思う。転がしたら寄らない場所からチッパーを使っても、寄る確率は低い。それは「最新」でも同じだ。
グリーン近くに来たから、チッパー!ではないし、グリーン周りにきたからサンドウェッジ!でもない。転がしで寄りそうならチッパー!もアリだし、上げなきゃ止まりそうになければ、チッパーを持っていてもサンドやロブで打たないと仕方がない。
ここまでの長い文を2行でまとめると、次のようになる。
今まで転がしたいと思った場面でいまいちうまく行ってなかった! そう思ってるあなたにおすすめのアイテムが「チッパー」である。
転がし専用のJIGGERは。スコットランドのリンクスではこのように、まだまだニーズがありそうだが。