三代澤マジック

三代澤本寿の染め和紙

信州・松本は民芸館、民藝店、民芸家具屋が有名で、今はクラフトイベントの聖地としても全国から多くのビジターを集めている。今、大人気の型染絵本作家柚木沙弥郎も高校時代を疎開地だった松本で過ごした。

私はドラマ「白線流し」好きが高じて松本に行くようになり、この土地が持つアカデミックな風土が好きになり、民藝というものに興味を持った。ちきりやの丸山太郎、全国区の人気者柚木沙弥郎、松本民芸家具の池田三四郎を入口にして、柳宗悦、芹沢銈介、益子の浜田庄司、バーナード・リーチなど民藝活動のパイオニアたちのことを知っていった。

そんな中で、私が最も好きになったのが三代澤本寿である。松本出身で芹沢銈介に師事した型染め作家である。

松本に行った時は必ず「三代澤ギャラリー」に立ち寄り、本寿が和紙に染めた「ハギレ」を物色して買ってくる。決して図録に載るような大作ではなく、もしかしたらこの上にしっかりとした図案を乗せるのでは?と思うような背景紙みたいなものもある。しかし、これらはまさしく本寿本人の手になるモノで自宅に残されていたもの。遺作である。いつしかこれを目当てに松本に行くようになった(汗)

冒頭の写真は、木製のパネルに和紙を貼り付けようと霧吹きでまんべんなく水を吹きかけた時のものだ。この和紙自体は、もっとちゃんとした図案の入った作品を購入した際、それが傷つかないようにとギャラリーの好意で包装紙的に付けてくれたものである。私も茶色い滲みのある無地の「和紙」だと思っていた。大判だったし滲みのある不規則な表情も飾っておくと面白いかと思い、今回パネルにすることにしたのだ。むろん、ちゃんとした型染め作品をパネル化するための「練習」感覚であったことは否めない。

霧吹きで水をかけると勢いよく和紙が水を吸った。そして、前触れもなく菱形の紋様がふわりと浮き上がってきた。ギャラリーでもらったオマケの紙がいきなり三代澤本寿の作品として目の前に現れたのだ。正直、ものすごく驚いた。そして感動した。

菱形を眺めていると、なんだかそろばんのように見えてきた。パネルはものすごく気に入った。勝手に「そろばん」というタイトルをつけ自宅のいいところに飾ろうと決めた。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在