ずっと探していた絵本の初版を手に入れた。02年に一度大手から復刊されたのち絶版状態となり、今年作家さんの生誕100年を記念して再復刊された絵本。復刊された時にリサイズが行われサイズが小さくなったことは知っていた。でも、そんなにそこは気にしてなかった。今年再復刊されるまでは、リサイズされた復刊本すら滅多に流通しなかったからだ。プレミアもついていたし手に入るだけで御の字だった。
今年、再復刊本が出たことでそれまでのようなプレミア価格はなくなり、復刊本が単なる中古本として扱われるようになったのはとてもよいことだと思った。とにかく絶版時の価格は異常だった。
それに合わせて「初版」の価値も暴落したのだろうか? セコハンサイトで再復刊本と変わらぬ価格で売られていた。私はすぐにゲットした。
復刻本も持っているが、その時感じた印象と「初版」の印象はまるで違った。サイズがひと回り以上大きいことで絵の迫力が全然違うのだ。作者はこのサイズ感で読み手に伝わるように構図や色彩を考え、表現したのだろうとすぐに感じた。柚木さんが絵本作家として認知されていく最初の一冊だ。その制作に対するこだわりも強かっただろうと思う。
こんなに絵のパワーが違って感じるのなら、なぜ復刊時にサイズを小さくしてしまったのだろう?と大いに疑問を感じた。オリジナルの半分も読み手に良さが伝わっていないじゃないかと。
もちろん、復刊時には作者もチェックしているだろうから、なんの関係もない私が憤慨するようなことでもないが、オリジナルを手に取り読み進めた時の驚きは半端なかった。初めてこの絵本が高く評価されていた意味に気付かされた思いだった。
オリジナルには、必ず復刻版にはないチカラが宿っている。それは書籍に限らず。ゴルフのクラシックパターなんかもそうだ。1963年の「The 8802」とその後の復刻版ではやはり別物と思うほど違うから。オリジナルを作り出すマインドと、オリジナルのコピーを作っていくマインド。大きな隔たりがあって当然だ。
前例がないところで、信念を持ちゼロベースから作り上げた道具と、それが売れたからと追随した似たような道具。最新道具の間にも必ず、この2タイプがある。オリジナルを生み出すブランドと後追いしていくブランド。この2種類がある。