この小川に架かる石橋が世界中に映しだされる一週間、150回目の大会がゴルフの故郷で開かれる。昔は洗濯物が干されていたこの川岸で生まれたゴルフのルールは覚えきれないほど複雑になり、裁定集は小説よりも分厚くなった。600年を振り返り、ゲームはこう変わったといえるほど長寿のものはいるはずもないが、読み返せる著書はそれなりにある。
海沿いの草原地帯を神が創りたもうたコースだとして人々が遊び、賭け事が始まり、職業ゴルファーが生まれた。よりゲーム性が高まるレイアウトを研究し、少々の切盛りをしたりすることが当然の如くされるようになり、その技法は海を渡り新天地で広まった。著名なプレイヤーも設計家もグリーンキーパーも、いずれも起源を遡ればこの地に辿りつく。
3つのクラブハウスがあるのにも関わらず、ある著名な老人が独りここで煙草をふかしたのには単純でないゴルフの歴史と精神性があるからだろう。賞金を稼ぐための職業ゴルファーがゴルフの故郷に立ち、それぞれ思い、それぞれ口にするゴルフとはどんなものだろうか。アマチュアゴルファーが、聴衆が思うゴルフはどんなものだろうか。
ニクラスがタイガーに語った言葉、パーマーがタイガーに語った言葉、紙面で文字にされない言葉もあるだろうと思う。水道をひねると飲める水が溢れ出る日本人には想像しきれないこともあるだろうけれど、この一週間はゴルフの本質的なことを考える時間を多めに取りたいと思う。