上がりにくいからこその3番なり

どうやっても高く上がらないのなら?

「全英オープン」になると、アイアン型のユーティリティクラブに注目が集まるものだ。PGAツアーでは5wを使っているプレーヤーが、スコットランドに来ると2番ユーティリティを入れたりするからである。この傾向、フォーティーンの「HI-858」が流行った90年代からずっと続いている。

アイアン型のユーティリティに注目が集まると雑誌その他でも、アイアンUT特集なんかが組まれるわけだが、ユーティリティ=やさしい →  やさしい=上がりやすい みたいな図式になっちゃう企画が多いような気がして少し残念に思う。上がりやすさを求めるなら、5wのままでよいではないかと思っちゃうのだ。

では、なぜ「全英オープン」になると、アイアン型のユーティリティクラブに入れ替えるのか? それはフェアウェイウッドに比べてバックスピンが少なめで風に強く、弾道高さも抑えやすいからだ。時に暴風にもなるスコットランドのリンクスでは、風の下を通して打ちたい場面も想定される。このためにわざわざ2番UTに入れ替えるわけだ。不用意にボールを上げたくないわけである。

それを踏まえておかないと、「簡単だと思って買ったが、意外に難しいじゃないか!」ということになる。上がらない=難しいが、一般的な認識だからだ。もうそろそろその繰り返しもおしまいでいいのではないだろうか。アイアンUTのやさしさは、上がりやすさというよりも普通のロングアイアンに比べたら打点ズレに強いというところにある。ロースピンの強い球を打てるところにある。20 度前後のロフトである。ヘッドスピードなりにしかボールは浮かない。

私のゴルフ仲間に中古ショップで4番アイアンを見つけて来ては試しているヤツがいるが、その言い分はこうだ。「どうやってもボールが上がらないから、林の中から脱出する時にいいんだよね」。テクニックで低弾道は打てないから、ロングアイアンの上がらなさを逆手にとって活用してしまおうというわけだ。この場合、上がりやすいモデルはNO GOOD。「この4番は使えない!」とキャディバッグから外される。この感覚がとても好きである(笑)

「耕す。」にも散々、登場している「MOE86アイアン」にもロフト21度がセットに入っているが、これも「高くボールを上げたくない時のために作った」そうである。世の中にはそういう考え方もあるのだ。

ボールが高く上がらなければ、ダメなクラブ(番手)というわけではない。低く打ち出し、ボールがすぐにランディングすれば大きく曲がってOBになることもない。向い風に煽られてポテンヒットになることもない。思ったよりも高く上がって林の中で落胆することもない。

考え方ひとつで上がらない!は、「低く打ちやすい!」「ライン出しがしやすい!」というメリットになる。

とはいえ、ロングアイアンが消えつつあるのも現状。ゴルフゲームに奥行きがなくなってしまったような気がして、少し寂しい気持ちになる。

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在