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フォーティーンでずっとクラブ設計をしてきた、
松吉宗之さんが立ち上げた新ブランドだ。
もう、期待感しかない。
その記念すべき最初の作品が、『tT WEDGE』。
長年にわたって続けてきたツアープロや膨大な数のゴルファーとの取り組みの中から導き出した、「使えるウェッジ」の選択肢である。ショットタイプ別に特徴をもたせた性能を、緻密な3D設計に落とし込み、精密な製造プロセスによって確実に具現化している。
だいたいこんな感じの、ではない。同じ面が一つもないほどの繊細な形状を設計に落とし込み、CNC制御で高精度で削り出していくのだ。ハンドグラインドのようなぬくもり感をも3D設計で再現できる。そんな熟練した技術がここにはあるのである。
フリーマガジンBUZZ GOLFの連載ページでご一緒していることもあり、最近、松吉さんとお話することが多い。お会いするごとに松吉さんの人としての真面目さ、そしてクラブ設計に対する“情熱”の大きさに引き込まれていくようだ。
「変な話、自分が食べていくだけなら会社で設計の仕事をしていればよかったと思います。でも、新しいクラブを作るだけではなくて、情熱ある作り手を育てていくには、自分が独立したほうがやりやすいと思ったんです」
それはまさしく、師匠である竹林隆光さんの遺志を受け継ぎ、未来へつないでいくための決断だ。
竹林さんの話が出た時、ふと思い出した。
一時期。ジャパンゴルフフェアの会場で、竹林さんとランチするのが恒例だった。とくに約束もせず、会場でお会いすると、ランチ行きましょうとなった。ゴルフクラブの設計が反発も含め、長さや体積、慣性モーメントの値まで上限が定められた時期だった。私は、こう制約ばかりではこの先新しいものはできないんじゃないか、とゴルフフェアでブースを巡るたびにクサクサしていた。竹林さんも、さぞやつまらない思いをしているのではないかなぁと思っていた。
でも、竹林さんはこういったのだ。
「これからがおもしろいんですよ。やりたいことがたくさんありすぎて困るくらいです。行き詰まりなんてありません」(竹林さん)
その時にこう思った。ルールは、エンジニアの発想を抑えることはできないのだと。ルールは常に発想の後追いで決まるものなのだ。
「竹林さんとは、常にずっと先のことを話してクラブを作っていたんです。目の前のモノではなくてホントにずっと先のことです。自由な発想であれこれ試作し、検証し…その中から、次に出すならアレはまだ早すぎるから、コレにしておこうとか。そういう感じで発売するモデルが決まっていました」(松吉さん)
そういうモノ作りをしたいから、独立したのだと松吉さんはいった。
そんな話をしたのは、2019年ジャパンゴルフフェアの会場だった。
つい話し込んでしまい会場を出ると、大観覧車が紫色に光って回っていた。