西から前線が伸びてきて、太平洋上から日本列島に薄くて低い雲がかかっていた。
雲の上は当然の青空。雲海が眼下に広がる。
富士山をも見下ろす機上の景色。非日常の世界がそこにある。
絶景哉、絶景哉。
私はおじさんになっても、小さい窓に額を引っ付けるようにして
ずっと外を眺めている。
2000mの山頂から見えた雲海は「絶景」と言われる。
でも、機上で見る雲海にそこまでの感動を覚える人は少ない。
富士山を過ぎたあたりでシェードを下ろし、眠りに入る人も多い。
絶景とは何だろう? そんなことを考えていた。
飛行機が最終の着陸体制に入り、雲に侵入していく。
真っ白なベルト帯を突き抜けるといきなり海が迫った。
靄って視界は悪かったが、ベタ凪なのがわかる。行き交う船舶もない。
海上にいながら深い森の景色を思い浮かべた。深い霧に包まれた湖畔の風景を。
着陸まであと5分。
水面ギリギリの世界にも「絶景」はあった。
思わず写真を撮った。
