
昔できたモノは、今の技術だったらちょちょいとできるだろうと考えがち。でも、経験上昔のモノを完全再現して!とお願いして満足のいく仕上がりになったためしはない。同じモノでも作り方が違う、加工する機械が違う、素材が違う、職人の技術が違う。当時のモノは当時だから出来たモノと考えた方がよいくらいだ。
クロームメッキの「サテン仕上げ」というのも、今はできないものの一つかな、と思った。今もサテン仕上げはあるけれど、80年代から90年代中盤くらいまでの白っぽく反射するサテンはほとんど見かけない。ミラー仕上げにヘアラインを軽くつけた感じが今風のサテン仕上げという気がする。
カタログ上、サテンフィニッシュとなっていても光の反射が黒光り寄りならミラー仕上げだなって思うし、白っぽい反射ならサテンだなって思う。この辺り、アイアンちゃんマニアは気難しいのである。
TN-87は基本的にはミラー仕上げなので、普通は黒光りのイメージ。でも、このアイアンが生まれた時代のプロたちはサテン仕上げのマッスルを使っていることが多かった。雑誌に載っていたTN-87ベースのプロトアイアンもたいていがサテンで白光り。カスタムされた形状だけじゃなく、(今となっては)特別なサテン仕上げとそのアイアンがキャディバッグに入っている「光景」に憧れたのだ。
とくにTN-87のバックフェースデザインで「サテン仕上げ」になっているアイアンは、眺めているだけでご飯を5、6杯おかわりできる。