自分の痕跡

近年、私が最も感銘を受けたのが「想像力とデリカシー」という言葉だ。想像力を働かせ、他人に配慮しながら生活することが「自分ファースト」が喧伝される時代だからこそ求められる。意識して身につけなければならないスキルである。

想像力を働かせれば、小さな何かに気づくことができる。想像力なしに、他者にデリカシーを持って接することはきっとできない。

ある日、自分が拾えずにコースに残したティーペッグが芝刈り機の刃を傷つけてしまうことを想像した。プラスティック製のティーペッグではとくに刃にダメージを与えやすいのだという。折れて地中に残っても土に還ることはない。

ゴルフをしていれば、ティーペッグは折るし、行方を見失ってやむなく置き去りにしてしまうこともある。自分はその場を去るが、自分のプレーした痕跡は残ってしまうのだ。

そうして「無塗装の木製ティーペッグ」が出来上がった。拾い損ねても、折れ残ってもそこらの木の枝と変わらない。そんな持ち物が欲しかった。正直、ティーペッグなんてボールが乗っかればなんでもいいと思ってきたが、なんでもいいなればこそ、どんなものを、どんな理由でチョイスするかが大事だと思った。

アイアンショットをうまく打てば芝が削れディボット痕ができる。バーディチャンス!と小躍りしたアプローチほどグリーン上に凹みをつけているものだ。洗面台、脱衣所、ロッカーにも自分の居た痕跡は確実に残ってしまう。自分の痕跡が時間差で何かに、誰かに、影響を与えている。そのことを想像して行動を決めたい。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在