ハンディキャップなんていらない!?②

(この記事はのつづきです)

ゴルフという競技では何故か上級者にとって有利な形になっているのではないかという疑問があります。一般的に他の競技ではこのようなシステムはなく、将棋で言えば飛車,角落ちが非公式な形で行われるだけです。何が言いたいかといえば、ゴルフの場合、上級者に負荷がかからなければ、いかに相手にハンディを授与しても上級者の方が圧倒的に有利なシステムだからです。技術的にも特に心理的にも。このようなことからもわかるようにゴルフは上級者があらゆる場面で発言力が強く、ゴルフコースのクラブの運営や競技会等におけるポジションも実権を握っているのが現状ではないでしょうか。

このようにゴルフでは上級者がそれとなく発揮している見えない力が存在していて、この世界に入ってみて初めてそれを感じることが大きく、そのような空気がゴルフの普及に大きな壁となっているとも見えるのです。「ゴルフが上手いからといってどうして上から目線で人を見るの」という空気感です。

一般的に上級者は基本的には保守的であり、競技の在り方、ハンディキャップの在り方、倶楽部ライフの在り方など伝統的に受け継がれてきたものを「良し」として変革を望まない人達が多いのも事実です。そして彼らは「ゴルフとはこういうものだ」「こう在るべきだ」という考え方が強く「上から目線でそれらを押付ける態度が高圧的」とビギナーやアベレージレベルの人たちには感じられるからです。

これらは一体どこからきているのでしょうか。

現状ハンディキャップが1つでも上位であるとそれだけで相手に対して優越感という感情が密かに発生しています。

私の個人的な感覚では、ゴルフの持つエリート意識と儒教の教えが日本独自の隠れた身分制度と絡み合って出来上がったように思えます。これは上流階級の社交としてのゴルフゲームがスポーツという意識よりも優先しているからです。表面では見えないようにしていますが潜在的には強烈とも思えるエリート意識が存在しているのです。

強いもの、地位が高いものがすべてを決める、というものです。

そのような中、日本でも全国共通の新しいハンディキャップ・システムを普及させようと懸命になっていますが、なかなか普及しない理由が3つあります。

一つはハンディキャップを使った効果的で面白いゲームがないからです。一般に取り入れられているペリア方式の方が手っ取り早く便利で公平性がこちらではあるのでペリア方式を採用しているところがほとんどです。

もう一つは統一のハンディキャップよりも「各クラブが発行するハンディキャップで十分、他のコースで使うことはないから」という理由。3つめとしては名門と自負するコースのハンディキャップの方が名門コースのメンバーであるという証となるためにあえてXXXコースのHDCXXです、と表現したい部分もあります。これも潜在的なエリート意識の表れです。

スポーツとしてのゴルフより社交としてのゴルフが根底にあるためにゴルフはルールの前にエチケットというものが存在していることでもそれが理解できます。

「強いゴルファーより良いゴルファーであれ」というゴルフの基本コンセプトは素晴らしいものですが、最初からこれを押し付けてしまうと子供でもそうであるように「そんなに面倒臭いならやらない」となってしまう恐れが多分にあります。

ゴルフの普及を考えた時、エチケット、マナーは当初は最低限でよく、ゲームを楽しめるようになってくると自然にゴルフの持つ素晴らしさや良いゴルファーの仕草や振る舞いを見て学んでいくものではないでしょうか。

まずはゴルフというゲームの面白さを体感してもらうことが最初で「君はまだ下手だからハンディキャップをいくつあげる」ではビギナーの人たちを突き放しているのに等しいものです。

ビギナーがスタート前に必ず発する言葉「初心者なので皆さんにご迷惑をおかけすると思いますが、今日1日どうぞ宜しくお願いします」と言わせてしまうことが問題です。

初心者が来たら、周りの人は1日エスコートしてゴルフを好きになってもらえることを率先して行うべきで、このような言葉を言わせてしまうこと自体ゴルフの普及には大きな障壁となっていることに気づかなければ普及より衰退の方が先に来る、というのが私の持論です。

(この記事③につづく)

この記事を書いた人

松尾俊介

Cultivator/ Shunsuke Matsuo
キャロウェイゴルフで20年、卒業して4年。今はフリーランスとして活動していますがそのメインテーマは「日本のゴルフを面白くする」です。
長年ゴルフと向き合ってきた中で、最近感じてきたことですが「ゴルフは言語と同じで便利なコミュニケーションツールのひとつ、そう「人と人を結びつける、理解し合う優れた道具」だと強く思うようになりました。
そのような視点で振り返ると、いろいろな人とゴルフをするたびにその道具の恩恵を受けながらここまできたんだなと感じるようになりました。
であれば、皆さんより少しだけより多くの時間と経験を積み重ねた分だけ、感じたこと、考えたこともあり、それらをまとめながら、日本のゴルフをもっと面白くして、ゴルフの楽しさを伝えたいな、次世代の人のために。
自身の終活の一つとして…