もう20年近く前のことになるが、ウイルソンの伝説クラフトマン、ボブ・マンドレラさんが「現代の開発者は可哀想だ。なぜなら、新発想と思えることのほとんどは先輩エンジニアの誰かがすでにトライしているコトだからだ」と言っていた。
ゴルフはその起源が今から700年とも800年ともされる、おそろしく歴史が深い娯楽である。
球打ちに興じるゴルファーの願いに今と違いがあったとは考えられず、いつの時代においても狙った距離と方向にボールが飛び、カップ付近にぴたりと止まる。そんな「最良の結果」を追い求めて様々なボールやゴルフクラブが開発されてきたのだ。現代は、そのたゆまぬ取り組みの突端にある。
マンドレラ翁は「新発想ではなく新手法(製法)と言った方が正しいコトがたくさんある」と言った。その時はウェイトを脱着し、重さや位置を変えるシステムや貫通型ホーゼル、スタンドキャディバッグなどを例として挙げてくれた。この発想は60年代までに自分たちがやっているし、スタンドキャディバッグの構造は1800年代からあるというのである。
今回、たまたま手に入れた六角形ディンプルのボール「ROYAL」を見た時、マンドレラ翁のことを思い出した。新発想云々ということではなく、ゴルフの道具は連綿とトライ&エラーが重ねられて今に至っている、その歴史の深さについてである。
今だけではない。それぞれの時代においてゴルフ道具は進化し、ゴルファーはその最新作に大きな期待を寄せる。