求む、ニッポンの評価

初代グローレ(右)の誕生から10年目、カーボンウッド「ステルスグローレ」として新登場

アメリカに次ぐ世界第2位のゴルフマーケットとして、日本はある意味で特別視されてきた。日本マーケット用の特別なシリーズ、日本特有のゴルファーニーズを満たすためのマイクロブランドが開発されてきたのだ。

キャロウェイゴルフでは「レガシー」、タイトリストは「VG3」、PINGは「ANSER」、そしてテーラーメイドの「グローレ」がそれにあたる。

日本特有のゴルファーニーズ。それはあくなき飛距離アップへの渇望であった。あえて「あった」と過去形としたのは、今や全世界、ゴルファーの全レベルで飛距離アップを欲しているように見えるからだ。PGAツアーのトッププレーヤーをターゲットにしたシリーズでも、開発目標の筆頭に“スピードアップ(初速アップ)”が掲げられる。今や、理想のゴルフ道具にプロもアマもないかのようである。

だからなのか、日本専用のマイクロブランドは一つ、またひとつと姿を消している。先に挙げた米国ブランドで新作を出し続けているのは、テーラーメイドの「グローレ」のみとなった。※VG3ボールは新作あり!

グローバルモデルの「ステルス」シリーズと同じく60層カーボンフェースを採用した「ステルスグローレ」

ゴルファーが求める理想のゴルフクラブの姿が同じようになってきても、ゴルファーすべてが同じ道具でよいかといえばそうではないだろう。体格、力の出し方、プレー環境、練習環境、そしてゴルフに親しむ頻度……。使い手のスペックが違えば、そのパワーを引き出し、理想弾道に導いていく道具の在り方(重心設計・重さ)が変わってこないとおかしいのである。

言葉を変えると、日本のゴルファーは恵まれているといえる。僕らのスイング、くせ、体力に合わせた専用クラブを開発してもらってきたわけだから。こんな国は他にはない。

しかし、どんどんマイクロブランドは減っている。もちろん、それはグローバルモデルで日本のニーズをカバーできるようになってきたからでもある。日本のゴルファーの心の内にも、マイクロブランドではなくトッププロと同じモデルを使いたいという願望、見栄があるだろう。メーカーとしても販売に苦戦するようであれば、専用ブランドなど続けていても意味はない。この風潮が続けば、早晩、日本市場向けブランドは姿を消すはずだ。ヘッドは同じで、軽量シャフトを用意しておけば十分という感じになっていくのだと思う。

“日本人のために”特別に開発されたブランドは、他の誰でもなく日本のゴルファーがコレを正しく評価しなければならない。競合ブランドだけでなく、同じメーカーのグローバルモデルと比べて、いいのか、悪いのか。欲しいか欲しくないか。なんらかのフィードバックをすることが“特別扱い”し続けてもらうための道である。

久しぶりに名器の誉れ高い、初代「グローレ」を構えてみたが、そのオーソドックスな形状は「ステルスグローレ」にも確実に引き継がれていると思った。テーラーメイドのグローバルモデルが放つギラギラとした先進感とは違う、落ち着きとクセのなさ。カーボンフェースの締まった打音も、よりしっくりと感じられる気がした。シャフトさえ選べば男子プロでもいけちゃうニュートラルな感じは、初代から変わっていない。日本仕様というより、大人仕様のテーラーメイド。変にシニアシニアしていないのも「グローレ」らしさだろう。

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在