湯治

人間は愚かな猿である、この頃つくづくそう思う。義理人情が通用しない時代になったといえばそれまでであるが、感謝の念を一瞬で忘れ去る。猿でも覚えているようなことを忘れ、毒を盛られ、もっともっとと行列を成す。

暗いときの小さな明かりに感謝していたことを朝になれば忘れてしまう。ひもじいときのおにぎりの旨さを知っているにもかかわらず豪勢な鮨を食らってしまう。気の紛らわしなのか鬱憤晴らしなのかわからないけれど、心まで貧しくはなりたくないと考えて、秘湯を訪ねたりする。

閑古鳥の鳴くようなひなびた温泉郷だけれども、そこには心温まるものがふんだんにある。ときどき毒抜きをしたほうが良いな、とくるたびに想う。

この記事を書いた人

八和田徳文

Cultivator/Norifumi Yawata
ゴルフの仕事に携わって四半世紀。ゴルファーの一人として、ゴルフコースデザイナーの一人として、ゴルフに纏わる想いを綴ります。肩の力を抜いて愉しめばゴルフはもっと面白いはず。
ゴルフコース設計家・ゴルフ文化愛好家・芝生管理アドバイザー