持っておくべきモノ

パタマンこと岩尾氏に送ってもらった初代プロV1の「1」

「そういえば、今につながるゴルフ道具の歴史はあのモデルから始まったよね!」って、書きたい時がある。そんな時に困るのが、当時のモノが手に入らないこと。雑誌などはヴィジュアルも重要なので、現物を撮影して誌面で紹介したいわけだが、メーカーにも古いモノは意外に残されていないのだ。

ウレタンソリッドボールのはじまりとして、タイトリスト「プロV1」は欠かせないわけだが、今、2000年当時の初代モデルを探そうと思っても、なかなか見つけることはかなわない。

ゴルフクラブなら20年前のモノでも容易に見つけられるが、ボールは消耗品である。経年劣化もあるだけに古い物を後生大事に持っている人も少ない。メルカリやヤフオクで時折チェックしているが、もう何年も出品されているところを見たことがなかった。

ボールナンバー「3」はもともと手元にあるのだが、撮影となると「1」にこだわりたくなる。それは、#1BALL in GOLFへの敬意を表したいからだ。

「早くツアーで使いたい!」というツアープレーヤーの声に急かされるように、開発コードネームそのままに公認球リストに掲載され、瞬く間に世界のプロツアーを“ウレタンソリッドボール“の時代に変えてしまった歴史的モデル。それが初代「プロV1 392」である。最初からV1xがあったわけではない。スタートはこの1モデル。このボールがツアーで実地評価されて、改良版、そしてプロV1xの追加へとつながっていったのだ。

PGAツアープロの厳しいニーズに応える、これまでにない最も優れたウレタンカバーソリッドボールを開発する。それが「プロV1」の開発コードネームの由来である。Vは積層構造を表す“Veneer(ベニア)”の頭文字だ。VictoryのVとかではないのが、個人的にはとても好きである。プロ向け積層ボールの1番目。そっけない開発ネームとデザインされていないサイドモデル名のフォント(書体)から、時代が大きく動こうとする当時の躍動と熱が垣間見えて胸が熱くなる。

だからこそ、撮影に使うボールナンバーは「3」ではなく、「1」にこだわりたいと思ってきた。

ようやく手に入れた初代プロV1の「1」。いつ撮影に使うのかはわからない。忘れた頃に使える日が来る、雑誌の仕事なんてそんなものだ。その時のために、この1球を大事に持っておくのだ。

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在