ゴルフボールの四方山話に花が咲いたのをきっかけに、足繁くキャロウェイゴルフ本社に取材に行っていた編集部時代を思い出しました。多い時で年に4回〜5回、カールスバッドに行って開発総責任者だったリチャード C.ヘルムステッターさんに話を聞いたものです。
キャロウェイゴルフのボールといえば、「Rule35.」が思い浮かびます。サーモセットウレタンカバーを採用した3ピース構造のボール。今のキャストウレタンカバーソリッドボールの先駆けと言えるでしょう。もちろん、タイトリストも同時期にキャストウレタンカバーボール「プロV1」を開発しているので、キャロウェイも先駆けブランドの一角という表現が的確でしょうか。
「Rule35.」というネーミングも今となっては知る人ぞ知るものになってしまいました。でも、私はこの時代のキャロウェイゴルフの魅力は、このネーミングセンスに尽きるとさえ思っています。
「Rule35.」とは、文字通りルールの35条目という意味になります。当時のUSGAルールは34条で終わっていましたが、キャロウェイゴルフはここに新たなルール、第35条を付け加えようとしたのです。
その第35条が、Enjoy the game. ゴルフを楽しもう!というものです。
Enjoy the game.は当時のキャロウェイゴルフのブランドスローガンであり、商標でもありました。シリアスゴルファーだけではなく、すべてのゴルファーが本当にゴルフを楽しむためにはどういうボール、クラブがあればいいのか。Enjoy the game.の名の下に前例にとらわれない柔軟な発想で新時代を切り開いていった。それが私が見た、ヘルムステッターさん率いるキャロウェイゴルフの姿です。
「Rule35.」は5個入りのスリーブパッケージで販売されました。当時も今も3個入りスリーブ箱が当たり前の業界ですから、5個入りパッケージに「バッグに入れづらい!」なんて文句をいうゴルファーもいました。しかし、それすらもボールの開発にあたり一般ゴルファーの1ラウンドあたりのボール消費個数を調べ、「ボール3個ではきっと不安。5個入りなら安心してラウンドを楽しめるだろう」という配慮から決められたものなのです。
なんのために、我々は新しい製品を創るのか。その目的が明確であり、作り手のマインドが製品から溢れ出ていた時代です。
ヘルムステッターさんは、会話の中で私がキャロウェイというと、「キャロウェイゴルフと言い直してくれ」と言いました。「我々はゴルフだけをやっている会社で、毎日ゴルファーのことしか考えていないんです。タイヤメーカーがゴルフのものも作っているのとは違うのですよ。だから、あなたも必ずゴルフを付けて呼んでください」と。
それもあって、私はいまだにキャロウェイ呼びは苦手。キャロウェイゴルフと書きたいし、言いたくなってしまいます。今はロゴからもGOLFは無くなってしまったので、気にすることはないのかもしれません。でも、ゴルフを付けずにはいられない。それはたぶん、私なりの「ゴルフ愛」に対するリスペクトなのだろうと思っています。
それにしても、久々に触った「Rule35.」の質感は素晴らしいの一言。ショートゲームが楽しくなりそうなバラタカバーのような「温度」です。
温かいゴルフボールってわかりますか?