縦軸と横軸のチャート。目安となる数値を決めて同じ尺度で各ブランドのプロダクトをマッピングしていく。売れているモノはどのポジションに多いのか? プロが好むモデルはどのような分散傾向があるのだろうか? そして、それに比べると我々の従来品は、、、、的外れなところにあったのではないか?
チャートを見れば、やるべきことは明白だ。売れてるモノ、使用者が多いモノに寄せていかなければ。。。買っても、打っても、使ってももらえない。そのようにして、各ブランドから同じような製品が出来上がってくるのかもしれない。同質化というやつである。
もちろん。
ゴルフクラブなど研究・検証が何百年も繰り返され、今まさに成熟期に入っている道具においては「同質化」するのは当たり前である。むしろ、ほぼ完成しているのに売るための理由付けとして進化・変化を求めていくことは、せっかくの黄金バランスを崩してしまう行為になりかねない。改善ではなく、改悪になる可能性が高い。コンパクトなブレードアイアン、ウェッジ、ゴルフボールなど。プロが好むギアに関しては、すでにこれ以上大きく変える必要がないパフォーマンスに達しているのではないだろうか。もちろん、製品の製造精度などは常に改善の余地があるものとして。
先日、ヤマハのニューモデル『RMX VD/Xアイアン』でゴルフをする機会があった。ご覧のようにホーゼル裏に突起がある奇抜なデザイン。ヘッドサイズも極めて大きい。異質なアイアンである。
新しいRMX VDシリーズはドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティなどをみると、現在のプロアスリートが好む製品チャートの中に、各モデルが明確な理由を持ってポジショニングされている。RMX VDアイアンもRモデル、Mモデルについてはアスリート使用アイアンとしてどうあればいいのか?を考えて再設計されたクラブで、ニュートラルでさらに安心して使えるラインナップになったといえるだろう。
しかし、写真の『RMX VD/Xアイアン』だけは、コレらとは別である。このモデルは、他社との同質化も、ユーザーとの予定調和も、販売店への迎合も感じさせない。唯我独尊、我が道をいくそんな感じのモノである。
このコンセプトクラブは前作『VD40』で始まり、『RMX VD/X』が2代目となる。構えた時にむむっ!となった迫力のラージヘッドは、デザイン的な工夫でかなり普通になり、ラフからの抜け感にも進化が感じられた。もちろん、前作同様、明らかに他モデルに比べミスヒットに強いことも実感できた。
ラウンドしながら、見た目にも、性能的にも、これくらい明確な方が魅力があるな。改めてそんなことを思った次第である。
このアイアンを打っているうちに、かつてカーステン・ソルハイムがデザインした『ZINGアイアン』を思い出した。当時としては異様な見た目、でもとにかくやさしさは抜群だった。営業的には構えにくいし、飛ばないし、と言われ奮わなかった醜いアヒルの子である。評価されたのは2代目の『ZING2アイアン』。こちらは見た目も洗練され、リー・ウェストウッドのエースアイアンになるなど大きく羽ばたく白鳥になった。
『RMX VD/Xアイアン』も、『ZING2アイアン』みたいに多くのプレーヤーに評価されたらいいのにと思う。こういう独自性があるモノを先入観なく試し性能評価することが、ゴルフクラブの同質化を防ぎ、わくわくできるゴルフギアの未来を守っていくことになるのだ。
ぶっちゃけプロが支持しているモノとは、変えてはいけない部分が多いモノである。だからニューモデルを打ったとて、大きな違いを感じられるわけではない。仮に、すごく良くなった!これまでと全く違う!という評判が立つような新しいアスリートモデルがあったとしたら、それは前作がよほど的外れなモノだった可能性が高い。
アマチュア向けクラブは、それとは違うだろうと思う。もっといろいろなことができるはず。
今の最新クラブは、ウイルソン、PING、キャロウェイ、プロギア、ヤマハ、フォーティーンなど、草創期に特別な個性・異彩を放つオリジナルのゴルフクラブを開発してきたリーディングブランドのフロンティア精神によってその土台が構築されていると言える。
醜いアヒルの子ほど、のちに美しく化ける可能性を秘めている。成熟期に入って久しい今、かつて感じた群雄割拠のわくわく感を求めるのは「わがまま」だろうか。