このために伐採はしない。すでに伐採、あるいは自然に倒れた枝から作る。
ゴルフ場のロッジの鍵をぶら下げるキーホルダーを作れないか? という相談があった。私はすぐにゴルフ場にある木で作ったらどうかなぁと思った。シティホテルのような洗練されたものなら注文すればすぐに作れる。でもその前に、自前の材料で作ってみてはどうか?と思ったのだ。
同じ木材でも、どこか知らない土地に生えていた木で作るよりも、その土地で生まれた木で作った方が“馴染む”に違いない。それは必ず伝わるのではないかと思う。
実際にのこぎり片手にゴルフ場を歩き回って材料を探した。ゴルフ場は山だ。生き物も豊か、植生も豊か。プレー中には味わえない「土地」のにおいを感じた。
今回、材料に選んだのはおそらく山桜の伐採枝だ。樹皮の下にはほんのり赤い木肌がある。たまにオイルを入れ、使い込んでいくうちにとてもよい褐色になっていくだろうと期待する。
こういうことをしたとて、すぐにどうこうなるわけではない。将来的にも大袈裟にどうこうなるものではないと思う。でも、どこかで、だれかに通じるものはあると思う。その土地で生まれたものは、空気の一部なのだ。だから、今回はその土地の中で加工作業も行った。パッティンググリーンの横で、黙々と樹皮を削り過ごした。