打球を尊重する

 

 

年季の入った4番ウッドのフェース面。これを状態が悪いと思うか、それとも……。

この春、Choiceという雑誌で「コースの骨格を理解し、ティショットでも距離を決め、狙ったエリアにボールを運んで行こう!」という企画を担当した。とにかく遠くへ!ではなく、浮島を狙うかの如くベストルートに運んでいく。それがゴルフの醍醐味ではないかと思ったのだ。

古いリンクスコースのあるホールの骨格を読み解き、第一打を運ぶエリアを想像したみたところ、190ヤードくらいでちょうどいいことがわかった。それ以上打てばポットバンカー群に入るし、それを避けて打っていくにはフェアウェイが狭すぎた。第一打は175〜190ヤード打てば、残りはミドルアイアン、ショートアイアンでグリーンを狙えるヤーデージだった。ドライバーは必要のないホールである。

その時、だいたいMAX190ヤードくらいを打っていける番手(ロフト)で、最も扱いやすいのはどうのようなクラブなのか?というところに発想を飛ばしてみた。ロフト22度くらいのクラブは、今、フェアウェイウッド、ウッド型ユーティリティ、アイアン型ユーティリティ、ロングアイアンと多岐にわたる。ゴルファーそれぞれが選択をしなければならないクラブ(飛距離)領域であり、もっとも悩ましい番手である。

知人が捨てるには忍びないとBASEに置いていったヒロ本間の6番ウッド

弾道データの比較はPINGの最新モデルたちで行ったが、個人的なお遊びでホコリをかぶっていたパーシモンの6番ウッドについても同じように計測してみようと思った。飛距離は出ないだろうがスピンが入っていいのではないかと思ったのだ。ロフトもちょうど22度くらいだった。

ゴルフを始めた時、ギリギリパーシモンヘッドドライバーの世代だが、実はパーシモンのフェアウェイウッドをしっかりと使った記憶はなかった。ゴルフを始めたばかりの頃はFWなど打てる気はしなかったし、なんとなくゴルフっぽいことができるようになったときには、もうメタルヘッドの時代になっていたのだ。

だから今回が初めてパーシモンのフェアウェイウッドを打ってみた!という感覚に近かった。よく知らない素材、クラブなのだから最新クラブへの興味の持ち方と何ら変わらなかった。先入観もなかった。

結果から言うと、非常に気持ちよく打てた。ヘッドが小さいがユーティリティだと思えばちょうどいい大きさ。シャフトを半インチカットしてお気に入りのグリップを挿して、早速ラウンドでも使ってみたが、非常にコントロールが効いて使いやすかった。ネタとかではなく、打球結果、そして打感が気に入ってしまったのだ。練習場で打っていても、打つのが楽しくなってしまいやめ時がわからないほどだ。6番がこんなにいいなら、4番はどうだろう? シャフトをカットし同じグリップにて打席に持ち込んだ。

これも素晴らしく良かった。

突然、背後から「あれ!使ってくれてるんですか!?」という声が聞こえた。このヒロ本間を事務所に置いていった人だった。昔気に入っていたクラブだけに捨てるに忍びなく、こういうのが好きそうな私のところに託していかれたのだ。私はパーシモンに1ミリも興味はなかったが、そのパーシモンにはカーボンシャフトが入っており、もし雑誌の企画で現代クラブとデータ比較したい!となった場合には実験用に使えるかも!と思い引き取ったのだった。

その人曰く、「捨てられても仕方ないし、部屋の飾りにでもしてくれればいいと思っていた」。いやいやかなり気に入っていて、この6番ウッドにテイストが合うドライバーを選び、今はこれに合うアイアンを探してるところですよ、というと本当に嬉しそうに、喜んでくれた。若干、涙目になっていたほどだ。

30年ぶりくらいに打たれ、びっくりしただろう。ウッドワックスでメンテナンスをしてあげました

4番ウッドは6番ウッドに比べ、フェースの痛みが激しかった。もらった当初は4番は状態が悪く、ゴミかなと思っていたが、実際に打ったあとにどう思ったかを記す。

「この4番、出来がよく、使いやすいから使用感が出ちゃってるのではないか」

運良く、前オーナーが偶然通りかかってくれたので聞いてみた。この4番、気に入ってたのでは?と。すると、よくわかりますね!その4番はかなり活躍してくれたんですよ!と返ってきた。やっぱり、そうなんだ……と感慨深くなった。打てばその良さに気づくのだ。こうなると傷んだフェースが愛しくも感じるのだ。

別に、パーシモンがよくて現代クラブがダメとかではない。イメージ通りに打てたり、気持ち良かったり、ずっと打っていたいと思うのはどのクラブか?というだけのこと。たまたま打ってみたら、これまで知ろうともしていなかったパーシモンの良さに気づいた、ということだ。

ここからあそこに打つ、ということがしやすいのがよいゴルフ道具だと思う。それぞれの視点で、そして打球結果で判断していけばよいと思う。

自分の結果をもって、人に薦めようとは思わない。

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在