写真のウェッジは、キャロウェイ本社に取材に出かけた際に、ロジャー・クリーブランドさんに削ってもらったモノだ。作業しているところを撮影したいので、何かやってくださいとお願いすると、じゃあソールでも削ろうかとなり、どういうソールがいい?と聞かれたので、「フィル・ミケルソンと同じソールに削ってください!」とお願いしたものである。
ロジャーさんの作業は大胆というか一切の迷いがない。グラインダーにソールを当てると結構一気に深い凹みを作っていく。感覚が頼りのまさに職人技だった。
コンケーブソールというのは多くのメーカーも採用しているものだが、ロジャーさんの削ったものと一般的なコンケーブソールを比べるとまったく違うものであることに気づくだろう。
バックフェースの・R・は、元々ロジャーさんが自分で研磨したウェッジの証しとして刻んでいたものだった
どこが違うのか?
気になる方はいろいろ比較して楽しんでいただければ幸いである。下記は私の雑感である。
最初の写真をみるとソールのヒールサイド後部に擦れてカッパーメッキがなくなっている箇所がある。これは知人のアマチュアゴルファーに結構長く貸していて、戻ってきたらこうなっていた。知人の癖が反映された使用痕だ。
今回、写真を撮りながら、このヒールの削れ跡を見ていて思ったのは、ソールの中心よりも後部に「面」があるのだということだ。この「面」がバンパーのような働きをしているのではないかと思った。この「面」をバウンスと捉えたなら、尋常じゃない角度であり、進行方向に対する大きな「抵抗」である。
また、リーディングエッジにも涙袋のようなぷっくりとした膨らみ(バンパー)が残されている。ロジャーさんの作業は大胆だが、やっていることは非常に繊細だと改めて思った。残すべきところがしっかり残っている。それこそがウェッジデザインの第一人者たるオトコの才能、センスなのだと感じた。
グラインド技術の卓越さは、削ったところではなく、触らなかった部分、残されたところにこそ現れる。それがロジャー本人が削った証明であるように思えた。