いつの頃からか思い出せないのだけれども、古物収集に凝った時期がある。まだその癖は完全に治りきっていないのだけれども、多い時は毎週のように段ボールが届いたこともある。鵜呑みにできない性格で、手にとり眺め、実球を打ち、時代背景を思い浮かべながら、あれこれの考察を繰り返したものだ。
気に入ったものがあると何組か取り寄せてみて、程度の良いものを一組残し、ほかは再放出するのだけれども、このときは通常の黒トップ以外のひとつを手元においた。自分が生まれる一年前のマスターズチャンピオンの名前が刻まれたもので、なんとなくバックフェイスが気に入ったから。この時はただそれだけのことだった。
つづく