最近、絵を描いている。描きたいのは「リアリティ」だ。
印象に残った光景を鮮明に映し出したい。
そのために考えたこと。それが鮮明に描かないことだった。
印象に残った光景は、目を閉じれば浮かんでくる。心に深く刻まれた光景ならばなおさらだろう。
その光景を直接「描こう」とすることは、いかにも無粋だと思った。
人は自分なりに、加工して、美化して、脳内に光景(映像)を保存している。
やれることは、記憶を呼び覚ます「きっかけ」を描くこと。
キャンバスに同色で描き、最後にさらに白くコートしてしまう。光景に想いを宿す人だけが、この不鮮明な絵をリアルな映像として観ることができる。
その景色を知らぬ者、思いを奪われなかった者にはまったく見えてこないが、想いのある人にはこれ以上ないくらい鮮明に浮かんでくる「あの光景」。目を閉じてこそリアルに浮かび上がってくる自分だけのメモリーだ。
Title/J・RESPECT ©︎Cluber2021
なんですか、コレ? という人が大半だ。
この「光景」に想いを留めた人にしか浮かび上がらせることができない、瞼の裏のリアリティがある。