James B. Beard、彼に学んだ芝草関係者は星の数ほどいる。一世紀の芝草科学の世界には数多くの芝草研究者がいるが、技術を文字に残せた研究者は限られている。Jリーグが発足する前から度々日本にも足を運び、芝の根を観察し、土を嗅ぎ、その目的を教えてくれた。彼の大きな手はあたたかかった。
日本語訳された教本はいくつか新しいものが発刊されてはいるが、基礎的な事項は大きく変わりない。芝草には太陽の光が大切であり、根には通気性と排水性が大切であり、そのための土壌環境の保持管理が大切である。どれだけ育種された最新品種でさえも、その原理原則に変わりない。太陽や風を遮るものは芝草にとっては阻害要因である。
人間の贅沢や我儘をかなえるために芝草管理技術は進歩はしているけれど、管理作業を行う人間のメンタルヘルスは軽視されている。あらゆるスポーツターフのなかで一番過酷な設定を求められているゴルフコースの芝草もまた同様である。施肥施薬をし散水をし刈込転圧を繰り返す、かなりの無理無駄を強いている。
芝生は文化のバロメーター、という先達の言葉が好きだ。人に優しく、環境に優しく、そうあって欲しいと願う。