旅人

いろんなこともあり、年を重ねたこともあり、今年読み返した奥の細道は心に響く。子を持ち始めて親の気持ちがわかるといわれるが、それに近いのかもしれない。そぞろ神の誘惑にも気を付けましょう。

月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老を迎ふる者は、日々旅にして旅を栖とす。古人も多く旅に死せるあり。予も、いづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず、海浜にさすらへ、去年の秋、江上の破屋に蜘の古巣をはらひて、やゝ年も暮れ、春立てる霞の空に、白川の関こえんと、そぞろ神の物につきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて、取るもの手につかず。もも引の破をつゞり、笠の緒付けかえて、三里に灸すゆるより、松島の月まづ心にかかりて、住める方は人に譲り、杉風が別墅に移るに〝草の戸も 住替る代ぞ ひなの家〟表八句を庵の柱に懸置。

この記事を書いた人

八和田徳文

Cultivator/Norifumi Yawata
ゴルフの仕事に携わって四半世紀。ゴルファーの一人として、ゴルフコースデザイナーの一人として、ゴルフに纏わる想いを綴ります。肩の力を抜いて愉しめばゴルフはもっと面白いはず。
ゴルフコース設計家・ゴルフ文化愛好家・芝生管理アドバイザー