ウェッジのソールにロフトとバウンスが刻まれるようになってから、希薄になったのがウェッジクラブの“専門職”感ではないかと思う。サンドウェッジは、砂からのショットを打ちやすく、ロブウェッジは高い打ち出し角度のロブショットが打ちやすいようにと、それぞれ特別な工夫がされて登場した。それはバウンス角だったり、幅広のソール形状だったりする。単にロフトではなく、ソールまで含めて打ちたいショット、クリアしたい状況のために専用設計されたのがウェッジのそもそもなのである。
ウェッジというとあらゆるショットに対応できる「オールラウンダー」みたいなイメージがあるが、基本的なウェッジのあり方はその逆の「エキスパート」。特定の環境、ショットを成功に導く専門職である。厳しいライコンディション全般に対応できる、というバウンスの万能感が「オールラウンダー」的なイメージの源なのかなとも思う。
もちろん、フェースを開いたりできる万能感の強いソールグラインドなども今はあるけれど、それはさまざまな構え方に対して対応できるという意味。スクエアに使えばバウンスは少なめ、フェースを開くとバウンス効果が強くなる。万能ではなく、調整がしやすいという意味である。
今は、ロフト表示が主体となってしまったがウェッジの役割が「エキスパート」であることには変わりはない。我々ゴルファーは、バンカーから脱出させやすい「サンドウェッジ」を選び抜く必要があり、得意なアプローチがしやすい「アプローチウェッジ」を持っておくことも大切なのだ。
「アプローチウェッジ」とは、PWとSWの間を埋めるウェッジのことではない。よくやるアプローチを専門職としたクラブのこと。ロブショットをよくする人には「ロブウェッジ」を。転がしを多用するなら50度や52度のウェッジ、あるいはチッパーなども転がすことを専門とした「アプローチウェッジ」の一つといえる。
グリーンが近いからと言って、一番ロフトの大きいウェッジを持ってアプローチにいく人が結構いるが、これがいちばんウェッジを「難しく」する。たとえば、普通に打てば高く上がるSWやLWで転がそうとするのは、クラブにとっては専門外。これはウェッジが難しいのではなく、自分でゴルフを難しくしているだけなのだ。
改めて言おう。ウェッジはみんな「専門職」である。一本に専門外の役割を求めすぎるとゴルフが難しくなる。基本的には「バンカー専門」と「アプローチ専門」、そしてフルショットでPWとSWの間を埋める「穴埋め専門」の3本を入れておくと、無理なく使えて便利である。それがゴルフをシンプルにする。