目に見えないものでも感じることはできる。たとえばゴルフクラブのバランスポイント(ヘッド重心やスイングウェイトではない)も、コツさえ掴めば手に取った瞬間、指の「腹」で感じることができる。均等にかかる「重さ」がゴルフクラブの中心を教えてくれる。
たぶん、効率のいいスイングとは、このクラブの中心を常に自分の手の内に入れて動くことだ。合わせた両手のひら。まさに手の内の中にゴルフクラブの中心がある感覚。上手い人はきっとそういうクラブの中心を自分から外さないスキル(コツ)を身につけているのだと思う。
Swing Leadという練習器具を、考案者の今野一哉プロ直々にご持参いただいた。薄いバネ鋼板の先にアイアンヘッドみたいなウエイトが装着されている。グリップも平べったい特殊なものだ。ワッグルをするとブニャンブワンとシャフト(バネ鋼板)が手元から大きくたわむ。
簡単にいえば、これをブニャンブワンさせないように上げ、振り切るか。それが効率の良いスイングの証明であり、コツとなるのだという。
やってみると、グリップからして平たいというのがポイントなんだなと感じた。両手のひらを合わせて握ると、その合わせた中心に2ミリ幅の板の「ミネ」がきた。「ミネ」を横にしない限り頼りない板は超硬の「棒」のように感じる。具体的には、左手親指にこの「ミネ」が乗っている時だけ、平たい板がコントロールしやすい「棒」になるのだ。
この練習器の横幅は2センチくらいある。対して「ミネ」の幅は2ミリだ。
やってみてもらえばわかるが、幅広い面の中にはこの物体を硬くする(安定させる)中心は見出せない。しかし、写真に撮るのも難儀をする超薄の2ミリの中に驚くほど硬い中心、物体の芯を感じることができるのだ。これは本当におもしろい。
ゴルフクラブにも、この「ミネ」のようになる向きが存在する。それがおそらく、手元とヘッド重心を結んだ「見えざる線」である。スイング中にこの見えざるクラブの「ミネ」を自分の中心に据え、外さなければきっとそのクラブを効率よく振ることができる。そして、その姿を外から見れば「いいスイング」に見えるのだ。
私の思いつきもあながち的外れではないのかな、と。この練習器を振っていて少し安心したところだ。
おそらく、この練習器のシンプルで核心をついた凄みのようなものは伝わりにくいものだと思う。でも、理屈がわかりやすいことが重要ではないのだ。モノの中心を感じることができるかどうかが最も大切。中心、ミネ、背骨。コツとは骨のことだ。コツは頭で理解しても掴めるものではない、感じるものだ。