棟方志功を観に行ったのだが、最も気に入ったのは別展示MOMATコレクションにかけられていたこの大きな絵だった。写真ではコントラストがついているが、実際の展示空間においては、最初ほとんど黒塗りの和紙のようにみえた。墨で塗りつぶしたような濃淡が多少ある紙といった雰囲気だった。
でも、絵の正面に据えられた椅子に座って眺めていると、深い森の中に轍が見えてきた。そして木々がどんどん鮮明に、奥の奥まで見えるように感じられた。地面を見れば積もった落ち葉がありありと。木肌をみればゴツゴツとした皮の表面が浮かんでくる。
本当にリアルに描き込まれているからなのか。自分の想像が絵に投影されてしまっているのかはわからなかったが、時が経つほどすべてが鮮明になっていくような不思議な絵だった。
撮影可の作品だったので、写真に収めてきた。
写真でも同じだ。よく見ようと一点に焦点を合わせると、そこがいきなりリアルに感じられる。下草が風で揺れている感じにさえ見えた。
今見えているものは、想像なのか創造なのか。よくわからないが、とにかく気に入った。