見た目レングス

長尺がいいか短尺がいいか、という議論が常にある。個人的にはちょうどいいのが一番だと思うがいかがだろうか。

知ってる人は「おまえだって40インチドライバーだとか、今だって43.5インチのスチールシャフトを試しているじゃないか!」と憤るかもしれない。そう、いろいろやっている。そして、いろいろやってきた結果「やっぱりこうなんだろうな」という考えがまとまってきたから、ここに書いておこうと思ったのだ。

ゴルフクラブの「ちょうどよい長さ」は、ヘッドの大きさによる。というのが個人的な考えだ。やっぱ43.5インチがええわ〜と思ったが、違うヘッドを43.5インチにしても全然ダメ。何がダメなのか? もう見た目からしてダメなのだ。

当然のことだが、大きなヘッドと小さなヘッド。シャフトの長さが同じなら、大ヘッドは短く、小ヘッドは長く見える。230ccヘッドで43.5インチがちょうどだったから、460ccヘッドも43.5インチにしちゃえ!ってやってしまうと「必ず」後悔する。こんなに短いおもちゃみたいなクラブ振れるかい!ってなるからだ。ちなみに40インチの実験ドライバーは380ccだった(もう少し小さくていいと思った/つかまり設計はいらないと思った)

構えた時に「違和感のない」、ヘッドの大きさと長さのバランスがあるのだ。いろいろやった結果、43.5インチで使いたいならドライバーのヘッドサイズは350ccまでがいい(ホントは300cc前後といいたいが)。それ以上のヘッドサイズならもう少し長くしていきたい。例えば460ccのフルサイズヘッドなら、44.5インチくらいが短尺化の限界だろうと思う。

大きなヘッドの短尺化には「限界」がある、というのは何も見た目の気持ち悪さだけで言っているのではない。重心距離の長いヘッドを小さい回転半径でスクエアインパクトするのはかなり難しいからだ。大きいヘッドはある程度シャフトを長くして緩やかなヘッド軌道に乗せていかなければスクエアインパクトに導くことはできない。実際やってみても想定よりも右に飛び出す度合いが格段に高くなる。

43.5インチには、ちょうどよいヘッドの大きさがあり、460ccにもちょうどよい長さがあるということだ。

そのちょうどよさを推し量るために大切にしたいのが「見た目レングス」。構えた時にとくに短いとも長いとも感じない違和感のない長さを見つけたい。もちろん少し短くすれば「安心感が増す」と思えば、やや短くしてみるのもアリだろう。長尺にしてみたいなら460ccヘッドが「見た目レングス」的にもいいだろうと思う。

目から入る情報というのはとても大切だと思う。46インチなどの長尺ドライバーが一般化していた10〜15年前、クラブメーカーはシャフトのデザインに工夫を凝らした。“錯視効果”を利用して、長尺だが長く感じさせないようにしたのだ。人間工学に基づいて、と言っていた。

私は当時からこれを聞いて「?」と思っていた。長いものを短く見せてはいけないだろうと思ったのだ。なぜなら、人は短いと思えばその長さなりに振ってしまうからだ。短いと思って振ったのに、実際は長かった!ではきっとダフってしまうだろう。

長いものは長いものだと感じさせてこそ、人はそれなりに使いこなそうとする。それこそが人間工学なんじゃないかと思ったものだ。当時はそんなこと言わなかったが(一部、言ったかもしれないが)

長尺がいいか短尺がいいか、という議論は常にある。しかし、コトはそんなに単純ではないのだ。ヘッドの大きさ、重さが違えば、「ちょうどいい」長さなんて大きく変わってくるのだ。そのヘッドを使いこなすために人それぞれの「ちょうどいい」長さがある、ということなのだ。そして、その「ちょうどいい」長さよりも長いものを「長尺」、短いものを「短尺」というだけだと思う。果たして、それって必要だろうか。「ちょうどいい」のがいちばんではないか。

シャフト短くしてよい結果が出たならば、それは短尺化ではなく、適正化というべきだろう。

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在