ウェッジとは?

今年、あるゴルフ雑誌で【殿堂入り】ウェッジを選出するという企画があり、プロやクラブに詳しい人が集まって座談会みたいなことをした。当然、ボーケイ・デザインウェッジやクリーブランドTA588などツアーウェッジの代名詞が選出されたが、クラブ設計家の松吉宗之さん(ジューシー代表)がポツリとこんなことを言っていた。

「プロギアのR35も殿堂入り候補なのではないでしょうか。いわゆるチッパーですが、グリーン周りからのアプローチを成功させるための専用クラブという意味では、これも立派なウェッジだと思うのです」

バンカーショットを成功させるための「サンド」ウェッジ。ロブショットを成功に導く「ロブ」ウェッジ。低く打ち出し転がし寄せるための「チッパー」。確かに何も変わらない。特定の条件からアプローチを成功させるためのエキストラクラブ。それがウェッジなのだ。

過日、といってもこれを書いている時点では昨日だが(笑) 我がBASEにマーク金井さんが立ち寄ってくれ、物々交換みたいなカタチで自らが作ったオリジナルチッパークラブを置いて行ってくれた。「R-25」という名前だ。ロフト25度のパター様のチッパーである。日課の如く通っている赤羽GCで、朝な夕なにテストを繰り返して完成させたという、机上ではなく芝の上で考え出されたクラブである。

チッパーというとなんとなく初心者向けみたいな「目」で見てしまうと思うが、マークさんはエージシュート「62」を出すくらい上手い人。そういう人が「これがええねん〜」というのだから、決して初心者向けとかではないと思う。サンド、ロブと同じ。転がし寄せるための専用ウェッジなのだ。だったら、チッパーではなくて「ランニングウェッジ」とかにすればいいのに、とちょっと思う。これはチッパーじゃなくて、ウェッジなんだぞという意識改革が必要。私自身も、みんなも、である。個人的には「R-25」は、【赤羽ウェッジ】と呼ぶことにする。

今日は朝から【赤羽ウェッジ】でアプローチして遊んでいたが、やはりこれは“芝の上”で考えられたクラブなんだなってすごく感じた。自分はどっちかと言えば「9番アイアンを短く持って打っても同じようなアプローチはできる」と考えていたクチだが、実際に【赤羽ウェッジ】を打っているとそれとは全然違うんだと思いを改めざるを得なかった。パターの様にボールに近く構えられ、ショットというよりストロークする感覚が出ることでインパクトが一定になりやすいのだ。

ボールを弾くインパクトというより、フェースにボールが乗るウェッジ的なインパクトになるのも印象的だった。適度にバックスピンも入る。

やはり、何をしたいかが明確なほど、よい道具を生み出すことができるのだ。マークさんは毎日ハーフラウンドしていて、その中でこのウェッジを考え、試し、完成まで持って行った。机上ではなく、芝の上で試しながら煮詰めていったというプロセスが最も重要。そして、これを手にするなら「転がし寄せる」という道具が生み出された目的、背景を共有することが大事である。

EYE2の「L」でアプローチテクニックを磨き、ロブショットを得意とするフィル・ミケルソンのために作られたPMグラインドウェッジを買って、低く打ち出すジャンボ尾崎のようなアプローチをしようとしてはいけない。J’sウェッジでハイロブショットを打とうとするのも用途にあっていない。【赤羽ウェッジ】を手にしても、転がし寄せるイメージが自分の中になければ、きっとうまくはいかないだろう。

この道具に変えれば、夢のような結果が訪れるわけではない。こうしたい、こう寄せたいとイメージすることの方が先。それによって、選ぶべき道具は変わってくる。ゴルフの上手い人は、こういう球が打ちたいなと具体的にイメージできる人だ。

適した道具は、イメージの先にある。

 

 

この記事を書いた人

CLUBER

Cultivator/ Yoshiaki Takanashi
ゴルフの雑誌作りに携わって20余年。独立起業してから5年が過ぎたモノ好き、ゴルフ好き、クラフト好き、信州好きな、とにかく何かを作ってばかりいる人間です。
ポジション・ゼロ株式会社代表/CLUBER BASE TURF & SUPPLY主宰/耕す。発起人
記述は2018年現在