柳宗悦の遺稿「美とは何か」の序文を読んで、自由自在の「自在」の大切さについて考えるようになった。
実はもう一つ、気に入って取り入れている先人の教え、思考がある。
それは染色家 柚木沙弥郎のラジオインタビューを聴いてピンときたものだ。
99歳の柚木さんは日々の暮らしについて問われこう答えていた。※言い回しなどは正確ではありません
「悠々自適といわれるけど、暮らしていれば体がきついこともあるし、ヘルパーさんも来るし、仕事の人も来る。意外に忙しい。とても悠々という感じにはならないものです。」
「戦争や自然災害など、どうにもならないことに遭遇することもある。それは避けられない。社会で暮らすということは必ずストレスを抱えて生きるということ。いつの時代も悠々とは生きていけないのが当たり前」
染色作家、絵本作家として名声を得た今でも、悠々として暮らしているわけではないと柚木さんは言っていた。60歳になったら、リタイアしたら悠々自適な暮らしが待っていると思っている中年世代には、ある意味シビアな99歳の回答であった。
では、どうしたらストレスを抱えた暮らしの中で悠々としていられるのか。
「それは達成感ですよ。毎日、あ〜こういうことがあったから嬉しかったな、楽しかったなと一つでも思えれば幸せ。達成感は自分で決めるんです。たくあんが繋がらずに切れたとか、そういう小さなことでも自分がよかったなと思えたらそれでいいのです」
自分で決めるんです。自分なんですと、柚木さんはインタビュー中に何回か言っていた。
隣の人と一般的な幸福度を比べれば、なんだか自分が劣っているようでストレスになるけれど、自分の尺度で、基準で今日良かったことを抽出してみれば、自分にだって一つくらいは毎日良かったことがあるのではないか。そう思った。
だから、最近は毎日、ノートにたった1つでも「良かったこと」を書き出すようにしてみている。他の人にとっては小さいことかもしれないが、自分としてはこれはよかった、嬉しかったということ。やってみると意外にあるものである。
柳宗悦さんからは、自由でいるためには「自在心」がなければならないことを教わった。柚木沙弥郎さんからは、悠々といるには「自適」であればいいと気付かされた。
自由に悠々と暮らせるかは、自分次第なんだぞ。答えもセットになって四字熟語は成り立っているのだなぁと思った。
自由自在。悠々自適。下の二語が重要なのだ。