和歌は、人の心を種として(それから生まれ)、さまざまな言葉となっていった。
この世で生きる人は、関わり合ういろいろなことが多いものなので、心に思うことを、見るもの聞くものに託して言い表したのである。
花(の間)で鳴く鶯、水にすむカジカの声を聞くと、この世で生きているもの全ての中で、どれが歌を詠まなかったか。いや、全てが歌を詠んだ。力を入れないで天地を動かし、目に見えない鬼や神を感動させ、男女の仲を親密にし、荒々しい武士の心をも慰めるのは、歌である。
この歌は、天地が分かれた時から生まれた。そうではあるが、世に伝わることについては、天上の世界では下照姫(の時代)に始まり、地上の世界では素盞嗚尊から始まった。
神々の時代では、歌の音数も一定せず、飾り気がなくて、歌の意味もはっきりとは理解しにくかったらしい。
(それが)人の世となって、素盞嗚尊の時から、三十一文字(の歌)を詠むことになった。こうして花を愛し、鳥のようでありたいと願い、霞に情趣を感じ、露を賞美する心や言葉は多く、(それを詠んだ歌も)さまざまになった。
遠方(への旅)も、出発の第一歩から始まって長い年月にわたり、高い山(ができあがるの)も、麓の塵や泥(の積もったもの)からでき空の雲のたなびく高さまで成長しているように、この歌もこのように発達したのであろう。
古今和歌集仮名序/紀貫之
2023年5月18日 0時36分
新たな命、「和花」 誕生。
おめでとう。感謝!
祖父より