いつもの席に座り、気分で頼む。この頃はフレンチ濃いめがおおく、お気に入りだったモカはめったに口にしない。
二杯目を口に入れたころ、ちょっとあっさり目にしておきましたというマスター。ああ、あのことを気にかけてくれたんだな、なんて帰るころに思ったりする。
クリームが添えてあったり、スプーンが添えてなかったり、別に頼むわけでもなく間違えている訳でもなく、あれこれ気にかけてくれる。時間帯によって、会話によって、表情によって、量や器さえも変わる。
窓辺に飾ってある高倉健さんの写真のまえに、一杯の珈琲が添えてあった。ちょうど八年なんですよ。お気に入りの一杯をご馳走したそうだ。